黒鳥の湖 (祥伝社文庫)
黒鳥の湖 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
ナルピーチ
誰しもが他人には知られたくない秘密を抱えて生きていて、それが露呈した時の恐怖に怯えている。本作では仕事で成功を収め裕福な家庭を築いていた“財前彰太”を主人公に、ある事を切っ掛けに職を追われ家庭が崩壊していく様を描いた物語。小さな隠し事の積み重ねはやがては大きな亀裂を生んでしまう。宇佐美先生らしい筆致で人間のもつ“欲”の部分を丁寧に、そして人が持つ邪心を巧みに表現する。僅かな齟齬によって歯車が狂っていく感覚がなんとも悍ましい。序盤に撒かれた伏線もしっかりと回収、ミステリーとしても一級品の面白さを味わえる一冊
2023/03/27
machi☺︎︎゛
「ザイゼン」の社長の財前彰太は過去にある罪を犯しながら今は妻と娘と幸せに暮らしていた。ところが娘の美華が居なくなり同時期に女性拉致事件が起こり彰太は不安になる。美華が居なくなる少し前から妻がハマりだした瞑想の世界も何かが繋がっているようだけどなかなか掴めない。次から次へと出てくる新事実が盛り沢山で最後までずっと驚きで楽しめた。
2021/12/07
イアン
★★★★★★★★☆☆2021年にドラマ化された宇佐美まことの長編サスペンス。若い女性を拉致・監禁し殺害するという連続猟奇事件が発生する。被害者の衣服や身体の一部を家族に送り付けるという手口は、不動産会社を経営する彰太が18年前に関わったある事件に酷似していた…。人生を変えるために犯した18年前の罪と、忽然と姿を消した愛する一人娘。それは偶然か、それとも因果応報か。狭い範囲内で人物がリンクするためミステリとしての難易度は高くないものの、張り巡らされた伏線は見事。一番驚いたのは著者が女性だと知った瞬間でした。
2023/04/17
アッシュ姉
すべては自ら犯した罪の報いなのか。過去の事件と因果応報が交錯する宇佐美劇場。観客の私に見えていたのはほんの一部だった。財前一家の行く末を案じていたが、あの人もこの人も~な展開に。終盤に次々と明かされる驚きの真実、止まらない負の連鎖。終わったと思いきやまだまだ続き、ドロドロぐるぐる疲弊する。いくらなんでも繋がり過ぎではと思わないでもないが、どんどん読まされたさすがの宇佐美さんだった。
2022/03/03
オーウェン
冒頭から不穏な誘拐話に始まり、報道に思い出す事がある彰太。今の社長という地位に就く前に、人探しをしていたことと酷似しているから。その彰太の娘がバレリーナを辞めた後に、登校拒否や家出を繰り返し素行が酷くなる一方。宇佐美さんのイヤミス全快なミステリ。とにかく出てくる人物ほぼすべてがダークな感情を持ち合わせており、お前もかというくらい狂気をはらんでいる。終盤は誘拐の顛末から、出生の秘密。そして誘拐の真犯人まで怒涛のように明かされる。犯人が予想できる類いなのは勿体ないが、イヤミスとしてはかなりの底意地の悪さである
2022/06/23
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