潮鳴り
潮鳴り / 感想・レビュー
遥かなる想い
九州豊後・羽根藩を舞台に 墜ちた男の不屈の生きざま を描く。 「落ちた花は二度と咲かない…」 お芳のこの言葉が本物語の テーマなのだろう… 伊吹櫂蔵の覚悟が潔く 読者に勇気を与えてくれる。 題名の「潮鳴り」は 心の叫び声なのか…全編に 漂う再生を願う祈りの ようなものが清洌で、読者の心を強く揺さぶっていく… 読んでいて、何度も背筋を 伸ばして座り直している…そんな感じの物語だった。
2015/06/13
藤枝梅安
2時間半で一気に読みました。九州・豊後の小藩を舞台とした、葉室さんお得意のお家騒動物。葉室さんはこういう小説を書かせると本当に上手。最近ちょっと売れすぎて書きすぎてないか、と心配していたが、こういう小説を葉室ファンは待っていたんです。武士と商人、武家の女と市井に生きる女、それぞれの誇り。報われることのない誠意を貫く人々の潔さを、これでもかと詰め込んだ作品。「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、人の思いをも生きるのだ。」
2013/11/28
里季
襤褸蔵と蔑まれ身を落とした櫂蔵は、謀られて自害に追い込まれた弟の思いを遂げるために一念発起する。それを心の底から支えたいと願う、これも一度は身を落とした女お芳。武家と商家の癒着や影取引などを乗り越えながら櫂蔵は弟の無念を晴らそうとする。いつもと変わらぬ葉室節だ。が、なぜにお芳の命は散ってしまわねばならぬのか。「落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中に咲くのだ」お芳の花を胸の中に咲かせ、お芳の声を潮鳴りの中に聞き、櫂蔵は「生きてください」とのお芳の言葉通り、生き続けるのだろう。
2014/02/06
ぬたぁん
図書館本羽藩シリーズ2作目、読み始めて直ぐに引き込まれる。二度目に咲く花はきっと美しいこのフレーズは、誰もがグッとくると思う、一度の失敗で人生が決まるのはどうかなぁ。それと、お武家様方は命を軽んじられる、この侍魂が第二次世界大戦へと進んでいくんだな。やはり、教育が大事なのだと痛感される。人と人の間に序列があることが当たり前の時代に見事に仇討ちする、旨く話をまとめ上げるところは、作者の素晴らしい技術だ。
2016/04/07
ゆみねこ
これは良書!一度は躓いた男「櫂蔵」、襤褸をまとってうらぶれた暮らしをしたことから「襤褸蔵」と呼ばれた武士が、弟の切腹を機に落ちた花をもう一度咲かすべく戦う物語。梟の鳴き声は「襤褸着て奉公」、なるほど!
2014/08/27
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