ヴァンパイアハンター・リンカーン
ヴァンパイアハンター・リンカーン / 感想・レビュー
徒花
じつはアメリカの奴隷制度を作ったのはヨーロッパから渡ってきた吸血鬼たちで、奴隷解放運動を指揮したリンカーンは屈指のヴァンパイアハンターであった――という、アメリカの歴史改変小説。しかも、ヴァンパイアたちも一枚岩ではなく、南北戦争はヴァンパイアたちが人間を使った代理戦争であった。表紙からはBL臭が漂うが、そうした要素はないので期待してはいけない。史実に極力忠実に基づいた伝記形式のため、どこからがフィクションなのか、読んでいるとわからなくなる巧みさ。ティム・バートン製作で映画化もされているので、そのうち見る。
2016/03/13
アナーキー靴下
【オール・ハロウズ・イヴ(All Hallow's Eve)Horror読書会'24】リンカーンは吸血鬼ハンターだった、という設定の歴史改変小説なのだけど、リンカーンの日記を元にしたドキュメンタリータッチが妙に受け付けない。そんな凄いお宝日記を入手したならこんな風には書かないのでは、もっと分析的に見たり補足入れたり扇情的に膨らませたりするのでは、なんて度々思い、途中で諦めたくなった。しかし冒頭に戻り読み直してみて、この物語はある吸血鬼の要望により書かれたもの、つまり想定読者は吸血鬼である、と理解できた。
2024/10/14
hamham
映画のポスター『昼は大統領、夜はヴァンパイアハンター』が印象的だったので、大統領時ではハンター引退してて、してやられた!(配給会社に)って感じだ!最強のヴァンパイアハンターなのに、アクションが少ないのが残念だ。一番鳥肌が立ったのは、祖父VS吸血鬼。子供の吸血鬼の戦闘力、残忍さ、そしてバケモノに不釣り合いな美しい歌声…。恐怖せずにいられようか。私、恥ずかしいことに、南北戦争=リンカーンの奴隷解放宣言の図式を知らず、本作を通して初めて知りました…。貧しい生まれからここまで…まさに「多くの民の偉大なる父」だ!
2015/04/23
つたもみじ
小説として読むと、淡々とし過ぎていて些か物足りなく感じるものの、リンカーンの生涯とアメリカ史という史実と、ヴァンパイアハンターとしての戦いという虚構との融合は絶妙で、本当に一つの説として説得感すら感じてしまう。最愛の母を吸血鬼に殺され復讐を誓った少年の頃から、南北戦争や奴隷解放運動に至るまで…その背後にヴァンパイアの影を感じない事の無い戦いの生涯。ヘンリーとの関係。晩年は過酷に過ぎる。しかしラストの展開は絶対にヘンリーと一悶着あったんじゃなかろうか…と思うと、ちょっとだけ微笑ましい…ような気もする。
2015/07/03
瀧ながれ
イギリスで暮らしにくくなった吸血鬼は、開拓者に紛れて船に乗ってアメリカ大陸に渡っていた。白人として黒人奴隷を買うのはあたりまえの時代で、そうであるうちは合法的に食糧を手にいれられるのである。最愛の母を殺されて吸血鬼の存在を知ったエイブラハム少年は、吸血鬼を倒すことを決意する。…というものすごいでかい風呂敷が見事に一冊に収まっていて、たいへんおもしろく読んだ。このまま奴隷という食糧を与え続けては、アメリカが吸血鬼の国になってしまうと危機感を抱いたエイブは、奴隷解放を目指すのである。という展開がすごいな。
2018/06/10
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