死者の声、生者の言葉
死者の声、生者の言葉 / 感想・レビュー
寛生
【図書館】福島第一は3・11前も何度も大地震への対応などが指摘されていたが無視されてきた。そして、あの日爆発。メルトダウンが漸く公にされたのが2ヶ月後だった。「安部首相が世界に嘘をついてまで」と小森は臆する事なくいう。しかし、安部さんだけでなく私達国民も、永年嘘をつきすぎて、もう何が真実で嘘かさえも区別がつかなくなっているのではないだろうか。その嘘の言葉の蔓延は収束さえできないのではないか。そして、収束するはずの福島第一が、もし収束しないとしたらどうするのかという疑問が読書中私の脳裏から離れなかった。
2014/12/09
Gotoran
国文学者で「九条の会」委員長の著者が、サグタイトル「文学で問う原発の日本」が示すように、原発の責任を明確に追及しつつ、文学を通して3.11以降の日本(人)の「在り方」を考える手掛りを示してくれる。福島在住の詩人(若松、和合)の詩、川上弘美『神様2011』、大江健三郎『晩年様式集<イン・レイト・スタイル>』他を引く。賢治『グスコーブドリの伝記』から科学と宗教と文学を問う論考と漱石『現代日本の開化』での文明論的考察が特に興味深かった。文学を介しての死者との対話、声に耳を傾ける意味を深く考えさせられた。
2014/09/14
Takao
2014年2月25日発行(初版)。すでに震災から12年経過したが、福島第一原発の事故はほとんと何も解決しないまま「汚染水」の海洋投棄が始まり、本棚で9年間眠っていた本書を読むことにした。2011年に書かれた、第4章(宮沢賢治・『詩人会議』)、第5章(夏目漱石・『すばる』)に加えて、書き下ろしの第1章(福島の詩人たち)、第2章(大江健三郎)、第3章(川上弘美)、第6章を配した構成。取り上げられている作品のほとんどを読んでいない私には十分理解できないところが多かったが、死者の声に耳を澄ますことを心に刻んだ。
2023/08/31
林克也
このところ、遺伝子、脳などの本を読んで、結局(自分と同類の)まともな人たちが何を言っても、いまの世界のシステムを変革してヒトや他の生物が快適に生きていく地球を作ることに殆ど絶望しかけていたが、この本を読んで、可能性は非常に低いが、ゼロではない、かもしれないと少し希望が湧いてきた。ただし、文学は興味がある人しか読みに行かないから、結局はこの本が世の人に与える影響は限定的か。あと、大江健三郎を読んでいない人にはわからない本だとも思う。
2014/05/13
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