たば風
たば風 / 感想・レビュー
じいじ
作者・宇江佐さんのやさしさが伝わってきます。春の暖かな陽ざしの中にいるような読み心地の6短篇。表題作【たば風】は、許嫁の菩提寺の墓前で、将来を誓い合う若い二人に突然思いもよらぬ悲報が…。武家社会の跡目相続争いの物語。私は【恋文】がとても好かった。町屋の娘と武士の結婚ををテーマにした、現代にも当てはまりそうなお話。夫の情がなくとも子は孕む、4人の子宝に恵まれます。末息子の元服を機に、妻は離縁を決意。その息子の妙案が、両親の離婚の危機を救います。母子の思い遣りが心に沁みる物語です。
2021/04/11
KEI
著者の故郷である函館や松前藩の幕末を舞台にした表題作を含む6篇。「たば風」とは、蝦夷・松前藩のある土地に強い風でまるで束になって吹き付けるとの事。どの短編史実に基づいる。特にお気に入りは「たば風」許婚と結ばれる事も出来ず まなが哀れでもあり、まなを助けた伝十朗も哀れだった。「恋文」末息子の元服を機に離縁しようとする母に夫に恋文を書く事を促す末息子の機転で翻意する。どの話もたば風が吹き抜ける様な切ない話だった。
2023/04/26
さなごん
「たば風」結ばれなかった思い。「恋文」自分の気持ちを言葉にしてみる。伝えてみる。「錦衣帰郷」徳内の話。別の作品でもあったよね。「柄杓星」夕映えと似てる?「血脈桜」乙女たちがかなしい。「黒百合」維新の激動に振り回されてる。二人が逃げきれてほしい。
2015/12/28
なにょう
「たば風」「錦衣帰郷」がよかった。あとは松前藩と幕府瓦解に伴う混乱が描かれていた。★「錦衣帰郷」山形県の農村出身の最上徳内は、紆余曲折を経て、蝦夷地探検家の第一人者となる。故郷に帰って錦を飾る。とても興味深い内容だった。★作中の女たちは言う。女郎屋に売られるくらいなら、これしきのことなんでもない。女の人生はつらい。
2024/09/29
蜻蛉切
久々の宇江佐作品。 長いこと積読状態であった。 蝦夷・松前藩が舞台(江戸が舞台のものある)の短編作品集である。 個々の場面ごとでは、なかなかに味わいがあるのだが、作品のサゲの部分が、どうもなんと云うか「尻切れとんぼ」な感じで、著者独特の、あとを引く様な余韻がなかったように感じた。 そこここに、「宇江佐色」はあるのだけどなぁ・・・。 著者の連作短編や長編に比べると、やはり読み手としては「満足」とはいかなかった。
2017/11/16
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