映画にまつわるXについて2
映画にまつわるXについて2 / 感想・レビュー
のぶ
映画「永い言い訳」を制作するまでの約5年間に関わったエッセイ集。自分は原作本は読んでいるが、映画を観ていないのが無念。でもこの本は十分に楽しむことができた。本書の一作目の感想を書いた際に、人を良く見ている人だと書いたが、それは変わっていなかった。加えてとても強い人だという印象を受けた。作中に苦労話めいた事は書かれておらず、さらりと流しているが、原作を自分で書き、監督までしてしまうのは、大変なプレッシャーだろう。まだ若いこの才人の今後を期待したい。
2017/06/11
おさむ
「使う言葉こそがその人物と言っても良いと思います」映画監督であり、作家でもある西川さんらしいひとこと。本著は「永い言い訳」の制作に関わった5年間の記録。良い映画で原作も直木賞候補になる高水準でしたが、紆余曲折、試行錯誤、七転八倒してつくりあげたことがよーくわかりました。向田邦子の「父の詫び状」を生んだ「銀座百点」に載せた西川さんの文章を読むと、その文章力と構成力に脱帽します。これからも向田さんばりの映画、小説を作り続けてほしいですね。
2017/06/10
panashe
『永い言い訳』小説の執筆から映画のプロモーション終了までの5年間の記録。映画監督の違いとは何? カット割りの違い、俳優、曲の選択。何度も迷い、戸惑い、歩きながら時に立ち止まってまた戻って考え、試行錯誤しながらの映画製作。製作に関わる多くのスタッフとの出会いと別れ。西川さんの人柄がよくわかる。こうやって選ばれた沢山の者達で出来上がった作品。もう一度鑑賞したくなった。主演の本木雅弘さんとのメールのやり取りが何とも…。面倒臭い奴だと思ってたけど、うーんやはり笑!
2017/07/16
ぐうぐう
中村勘三郎の突然の訃報を哀しみつつ、死者を偲ぶのではなく生きている人を生きているうちに偲ぼうと思う。映画の宣伝で撮られる側に回った経験から、「撮られる」という過酷さを知り、「撮る」ことの傲慢さに至る。視点の転回は、ときに発見を導く。西川美和のエッセイを読んでいていつも覚えるのは、そんな発見への素直な喜びだ。戸惑いや、もっと言えば否定的なニュアンスが、思考の過程を経て、やがて肯定の境地に至る。簡単なようでいて、それはとても難しい。(つづく)
2019/05/01
たらお
映画「永い言い訳」のエピソードが4分の3なので、前作に比べるとなかなかコアな内容。監督の心の声は読者に作り手の孤独を感じさせ、読んでいて息苦しくなる。なぜなら、彼女は自分の気持ちはもちろん、相手の気持ちも掘り下げて考えるからだ。それでも映画作りは決断の連続で、前に進むためには続けていた関係性を変えねばいけなかったり、スタッフや役者にも厳しいことを伝えねばならなかったりする。そんな監督の背負っている重さを読んでいて感じざるを得ない。比べて、映画以外のことを綴った文章の伸びやかなことといったらないのである。
2017/04/23
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