神の涙
神の涙 / 感想・レビュー
starbro
馳星周は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。馳星周なので、単純にアイヌの話ではないなと思っていたら、広義の震災小説でした。帯に書かれた号泣程ではありませんでしたが、後半不覚にも少し涙ぐんでしまいました。著者にしては、ヴァイオレンスの要素がかなり少ないので、暴力シーンから馳星周を敬遠していた人にもオススメです。
2017/09/21
Die-Go
図書館本。アイヌの血を否定したい少女と、アイヌの血に誇りを持つ祖父、そしてアイヌの血にルーツを見出だした謎の青年の3人が織り成す物語。アイヌにとって、神(カムイ)を崇めるとはどういうことかが物語の端々から伝わってくる。東電の原発のことを絡めるているのも見事。読み易く、楽しい読書だった。★★★★☆
2019/03/04
おしゃべりメガネ
作品の大半がセックス&バイオレンスのイメージな馳先生ですが、本作は別人かと思えてしまうほどピュアな作風でした。やはり書ける人はなんでも書けてしまうんですね〜。今作の舞台は北海道は道東の川湯で、アイヌをテーマにヒューマニティあふれるお話でした。読後感がこれ以上なく、スッキリ爽やかな馳先生作品も珍しいですね。アイヌの伝統、木彫り、生きざまなどが描かれ北海道のインパクトが絶大な作品です。特に道東界隈が長かった自分にとっては風景などがイメージでき、読んでいてまるで映画をみているかのような素晴らしい作品でした。
2017/10/07
いつでも母さん
北海道に、アイヌの血を持つ自分のルーツを捜しに来ただけじゃなかったんだ。東北の震災がもたらした不幸=東電の責任のけじめは今も曖昧なままで、雅比古と仲間のしたことは勿論許される訳も無い。その事件を絡めずとも絶対的な自然と共存するアイヌ・敬蔵が良い。その孫・悠の気持ちも切ない位にわかるのが辛い。『先住民がいたんだよ。ここには!』痛いほど伝わる。その矜持は今の私の求めるものだ。『その日生きていくのに必要なもの以外は手にしない。ただただ一日一日を精一杯生きていくのだ』自分の生きる場所を見つけた者は強い。
2017/09/14
とん大西
…この読後感、なんと言ったらいいのでしょう。静かに静かに沁みいってくるようで…。アイヌに身を投じようとした青年、アイヌを切り離したかった少女、アイヌの誇りを持ち続ける老人。三者三様、思いは違えどやがて心は…。山が森が湖が-神が人間に与えた原始の自然が彼らの心に静かに静かにしみわたる。哀しみはある。葛藤もある。だからこそその先にある幸せ。生きることの喜びをわかちあえる幸せ。あぁ、やはり沁みてくる。不覚にも最後はウルッときたょ…。
2019/03/03
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