うたたねの地図 百年の夏休み
うたたねの地図 百年の夏休み / 感想・レビュー
だいだい(橙)
10か所の異なるシーンにまつわる散文(1ページ半程度)と、短歌から構成される本。全体が夏休みのシーンになっている。どこか懐かしい子供時代の場面?いまの断面?を含め、どこにでもある日本の風景がつづられる。作者自身の思い出なのかと思いきやそうでもないようで、短歌はよかったけど、散文は「あれ?」という印象。イラストもかわいいし、歌集を敷居が高いと思う人の入門編とすればいいのかも?個人的には普通の歌集の方がいいと思った。イメージを膨らませるように、と配慮して場所を特定しない散文は、ちょっと微妙、かも。
2024/07/28
水色系
毎回新刊を楽しみにしている岡野大嗣さん。今回は短歌×散文集。夏休み(会社9連休中!)のあいだに読めてよかった。夏の雲とソーダアイスが似合う本だね。以下引用→集荷扉をひらかれて郵便ポストの眩しいあくび(P51)/夢のようだったな なのに だからこそ セットリストを思い出せない(P98)/AMは風 FMは水の音 ラジオ勤めの鳩が言うには(P116)/聴くたびにまだ生きているような気が もういないから 気がしてしまう(P128)/滑走路を見ていた 見てはいなかった 眩しい角度だけを見ていた(P135)
2024/08/17
練りようかん
短歌×散文集。ホームセンターやファミレス、美容院にバス停。脳内でひとつの街が出来上がり、散策してる気分。図書館のなかに図書室みたいなコーナーがあり、テレビも置いてるとはユニークだ。「やがて、やがて、」のサンマルクから見える光景は、よく知る駅前と重なって架空と現実の交錯にどきっ。表紙のイメージと合致する「リハの音こぼれる野音 青空に満たされてなお青空がある」は音と空の二回の繰り返し、「集荷扉をひらかれて 郵便ポストの眩しいあくび」の擬人化に笑み。「テープだけ貼っときますね〜」の発想の転換が鮮烈!良かった。
2024/11/15
ERIN
出版記念の永井玲衣さんと岡野さんのトークショーでサインをいただいた一冊。お二人の対話を聞いて自分の中で補完しながら読み進めた。散文では短歌になる前の情景が並び、岡野さんの視点とそうでない視点がうごめく。描かれる景色が等価値だからこそ、私にとっては短歌として切り取られた瞬間の方がよりはっきりと印象に残ったのが興味深かった。作為的でなく、押し付けを感じさせず、ただそこに並んでいる言葉たちを眺めて、夏の終わりを感じる不思議な本だった。
2024/09/22
紅
短歌と散文。現実とは少しだけ違う、並行世界のような場所を歩いているような気持ちになる。行ったり来たり。またあっちに行ったり。ふわふわとした非現実感と、地に足のついた現実感と。良かった。
2024/09/16
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