初つばめ―「松平定知の藤沢周平をよむ」選 (実業之日本社文庫)
初つばめ―「松平定知の藤沢周平をよむ」選 (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
本書に収められた短篇は江戸の下町を舞台にした市井もので、すべて既刊の文庫に収められた作品から選りすぐられたものです。下町に住む職人や大工、博打打ちの男、女郎や水茶屋で働く女など、裏店に住む庶民の悲喜こもごもが描かれます。それぞれ皆、社会的には弱者という境遇にあって、道に迷い過ちも犯しますが、最後には小さな幸せを見つけることができます。そこにある小さな希望は藤沢氏の優しさであろうと思います。藤沢氏の弱い者を見つめる優しいまなざしが読者の心を温めます。
2011/12/21
ぶんぶん
【図書館】藤沢周平、そんなに読んでない、「橋ものがたり」ともう一本市井物を読んだくらい。 で、読んでみるか、何から読もうか、と思案していたら図書館の棚に「松平定知」氏の選の一冊がある。 人が奨める本から入門した方が良いだろう。 読んだ・・・いろんな人が言う様に庶民の悲しみ、心の機微を描いた良書だった。特に「女」の人の心の揺れ動きが凄い、良く表れている。周平の世界、凄く心に入って来る、隣の本にも手を伸ばす「本所しぐれ町物語」、これにしよう。松平氏のお蔭で藤沢周平のファンなりそうです。ありがとう松平定知さん。
2021/12/12
剛腕伝説
「松平定知の藤沢周平をよむ」で放送されたものからの10編を収録した一冊。表題作他既読のものばかり、それもかなり印象深いものばかりだった。最初は初読みの話がなかったので、少々残念に思ったが、再度読み直すことにより、より親しみと深みが増した。NHKアナウンサー松平定知の藤沢周平愛は半端ではなく、その思い入れに好感が持てる。巻末の「初つばめ江戸歩きマップ」は実際にかかわり合いの深い場所ばかりなので、ああ、ここがあの場面のあの場所なのかと、感慨深かった。全ての話が心に染みる。
2021/06/11
ひ ろ
藤沢周平の醍醐味は短編にあり、とつくづく再認識させられる一冊。「踊る手」は、中でもちょっと代わった作品。夜逃げせざるをえなかった おきみちゃん一家の苦しさ。置き捨てにされたおばあちゃんの絶望感。長屋の人々の人情。そういった情景が幼いしん公の目を通して語られる。せつない。だが、読了感がたまらなく良い。ああ、上手い!と思わず唸ってしまった。
2017/01/29
のんちゃん
少し前に藤沢作品の短編集を読了したので、重なっている作品もあったのだが、あらためて読むと流石、味わい深い。収録10作品全て市井物で、江戸庶民の哀しみやささやかな歓びがじわじわと伝わってくる。現代とは全く違う、人と人との濃厚な関わりに胸が苦しくなるほどだ。巻末の物語の舞台の散策マップは話を具現化するのに有難い。母の実家がマップの中にあるので、この辺り、私には馴染みの場所だ。当時と現代の地名の両方が載っているので、比べても楽しめる。深川周辺はタイムスリップできる街!と少し宣伝(^^)
2017/05/20
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