寂花の雫 (実業之日本社文庫)
寂花の雫 (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
短編では読んだことはありますが、長編としては初読みの花房さんです。名誉ある団鬼六賞を受賞し、バスガイドだったという経歴の作者さんだからか、なかなか独特の世界を築きあげています。官能小説ではなく、あくまでも性愛小説なので、ストーリーはしっかりとしていて、地味に結構ドラマチックでした。性描写もキツすぎず、芸術的でもあり、他の作品も気になる作家さんです。主人公の未亡人「珠子」をはじめ、登場人物がそれぞれしっかりと確立しているのが、読みやすいのかもしれません。京都弁の響きが、とても心地よくココロに響きました。
2015/01/22
ミカママ
表紙もエロいが、読み終わった今、タイトルのエロさにしみじみとヤられています。そうなんですよね、恋愛をするということと、相手に執着してしまう、というのは紙一重。私自身、いつも自分に問いかけてます。結論、執着も立派な恋愛感情だってことに落ち着いてますが(笑)性愛小説を描く女性作家さんは多いけれど、花房さんはその中でも、直球ど真ん中で来るところが好ましい。久しぶりのエロ注入、ごちそうさまでした(*´∀`*)ポッ
2016/01/31
じいじ
久々に花房小説が読みたくなった。ところが花房さんの作品は読みつくして未読本がないので、読了本から一番気に入ってる『寂花の雫』を選んだ。親の決めた5歳年下の男と結婚、その夫が5年後に事故死してしまう。夫が初めての男だった珠子は、出家する気持ちで京都大原で民宿を営むことに。時折訪れる、夫に育まれた肉体の欲望のうねりは、自分で慰めた。◆せつなさと静寂の中に女の情感を余すところなく描いた、これは性愛小説の傑作です。再読しても、やっぱり『寂花の雫』が好きです。花房小説のマイ・ベストです。
2020/10/21
chiru
あまり…というかほとんど読まない官能小説。 京都で民宿を営む女性は、夫を恨んだ過去に囚われ、夫の事故死に罪悪感を持ち、前に進めずにいる毎日。 泊り客として訪れる謎めいた人物たちを通して、夫を愛していたことに気付く心情の描写が素晴らしいです。 闇の中から解放されるような性愛シーンは、痛切さや、過去から自由になった瞬間を連想しました。 物語にでてきた寂光院や三千院に、いつか行ってみたいな。 ★3
2018/04/04
しいたけ
先日読了した『花祀り』のレビューに「私コレだめ〜」と書き、読友さんにこちらを勧めて頂きました。セーフ。コッチなら大丈夫。落涙こそしませんでしたが、切ない感じは十分読み取ることができました。結婚に至る経過はともかく、やはり伴侶となった男との未来は、自分のものだと信じていたのでしょう。殺したいと思う程執着する恋も、わかる自分が恐ろしい。珠子の止まった時の仄暗さと京都大原のしっとりした情景の対比が、文学的で綺麗でした。良かったけれど観音さんはもういいや、と思ったはずが最早次を積むあたり。まさか、私嵌ったのかも。
2016/06/13
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