酒田さ行ぐさげ 日本橋人情横丁 (実業之日本社文庫)
酒田さ行ぐさげ 日本橋人情横丁 (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
じいじ
これは掛け値なしに面白い。江戸・日本橋の人たちの日々の喜怒哀楽を綴った6編、粒揃いの佳作です。【松葉緑】が、しっとりとした風情の作品でイチオシです。夫亡き後の店を息子にゆだねて隠居した55歳の女主人公が魅力的。第二の人生を、縁談相手の見極め方、生け花…など若い娘たちへの「幸せ」指南に捧げる物語。この主人公は、作者自身の投影であるらしい。とても幸せな気持ちにさせてくれる秀作です。【浜町河岸夕景】も好きです。そして、亡き妻への思慕とその妹の恋心に揺れる男心、武士の矜恃を描いた【桜になびく】も素敵な作品です。
2017/08/25
のんき
江戸時代の日本橋が舞台。どの短編もよかったです。生きていくには、いろんな問題があります。でも、いろんな問題があっても、たとえ貧しくても、幸せだったんだろうな。ちっちゃな喜びでも、すごい嬉しかったんだろうな。っていうことが、わたしたち読者に伝わります。一生懸命やってれば誰かが見ていて、助けてくれたり、逆に助けたり。人情味溢れる社会だったんだな。とってもあたたかな読後感でした。
2018/06/22
shizuka
「浜町河岸夕景」が一番良かった。毒親に育てられたおすぎ、けれど毒に染まらず、正しい物は正しいと判断できる娘。無論面と向かって親に逆らう、親に意見するなんてことはないのだけれど、これは違うなと思ったことは自分ではやらない。毒親の元で芯を通すのは相当な苦労だったろうと思う。そして幼なじみとの縁、落ち着く所へ落ち着き、幸せをカタチにすることができた。ひとえに心の正しさを貫いた故と感じる。表題「酒田さ行ぐさげ」は少々理解不能。男の友情からキレイごとを抜いたらこうなるのかな。常に闘うのが男、なのでしょうか。むむむ。
2017/03/16
tengen
日本橋を舞台にした人情噺6篇。☆親への不満が募るおすぎだが手習所の主夫妻に出会い人生が変わる☆亡き妻を忘れられない勝次郎、上司に諭され再婚そして業務を継ぐ☆番頭に裏切られ店を潰した一文字屋一家と主を失った儒者の相馬一家が共に助け合う☆植木屋の息子幸太は両親が別れることになる危機を救う☆かつて奉公先のお内儀に救われた美音は隠居の身になり自らが若い娘の幸せを指南する☆昔共に奉公していた愚鈍な権助の出世に栄助は嫉妬で落ち込む☆彡浜町河岸夕景/桜になびく/隣りの聖人/花屋の柳/松葉緑/酒田さ行ぐさげ
2021/07/09
わんこのしっぽ
ほっこりする作品の中で表題作はちょっと切ない話でした。若かった時のほろ苦い思い出、掛け違えた思い。ついつい自分にも投影してしまうからか一番印象的でした。
2015/02/12
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