幻想運河 (実業之日本社文庫)
幻想運河 (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
HANA
冒頭大阪でのバラバラ殺人が発生、直後舞台はオランダ、アムステルダムへ。そこでもバラバラ殺人が発生し…。著者のミステリは極めて論理的現実的で幻想や怪奇の入り込む隙はなさそうに思ってたが、本書はアムステルダムという舞台のせいか、ドラッグという題材のせいか、どこか全編に霧のかかったような読み心地がする。とはいえ本質はあくまで本格ミステリ。トリックは予想だにしなかったもので、その手があったか、と膝を打たされた。ただ大阪の事件もアムステルダムの事件も動機がぼんやりしてて、著者の今までの作品とは毛色が変わった感じ。
2022/01/11
えみ
読者にもドラッグの疑似体験を味合わせてくれる?幻と現実の境界が次第に溶けていき、滲み出て混じり合った…まさにそこで起こったバラバラ殺人事件。犯人は誰だ?動機は何だ?と考えれば考えるほど脳がグラグラ不安定に揺れて思考が定まらず。一体何が起きていたのか。大阪とアムステルダム。過去と未来。小説と現実。夢幻が馨しい香りを放ち危険な世界へと誘う。アムステルダムで愛好仲間とドラッグを楽しんでいた恭司は、その仲間の一人が殺されバラバラにされて運河に流されたことを知り、真実を追求しようとするが…。彼の動揺と共鳴する一冊。
2022/03/17
yu
Kindleにて読了。 不思議なお話しというのが率直な感想。 大阪でバラバラに切断された遺体が、あちこちで見つかり、投げ捨てようとしていた男が警察に見つかるところから始まる。 そして舞台はオランダ、アムステルダムへ。アムステルダムの情景や、文化について、そこに住む日本人と現地人との交流が淡々と描かれていく。そこに起こるバラバラ殺人事件。冒頭で起きた大阪の事件と酷似した状況。何か伏線があるのかと勘ぐりながら読み進めて・・・。兎に角、不思議な世界観に満ちた作品。
2017/06/24
Walhalla
有栖川有栖さんのノンシリーズです。大阪、アムステルダム、そして作中小説でも事件が起きますので、その繋がりをいろいろ想像しながらの読書となりました。『幻と現実が交錯するミステリ』との説明がありますので、そのつもりで読めれば良かったのか知れませんが、真犯人も動機も、すべては霧の向こうと言った感じで、ちょっとモヤモヤが残ってしまいました。謎解きよりも、その独特な雰囲気を味わう作品ですね。
2022/08/01
ヨーコ・オクダ
いつもの有栖川センセとちょっと違う雰囲気。何かモヤモヤする系。そのモヤモヤから、読者たちがいろんな幻想を抱くこともできる。アムステルダムで発見された日本人のバラバラ死体→会社社長のボンボンで、見目麗しい音楽家・水島。彼が想いを寄せていた芸術家・美鈴。同じく彼女に想いを寄せていたシナリオライター志望の恭司。水島に想いを寄せていた高校生・アニタ。美鈴の兄、アニタの兄、ビジネスマン・久能も含め、ソフトドラッグで繋がる彼らの周囲で何が起こったのか?巻末の解説を読んで、ページを遡ってしまう人はうちだけやないはず…
2021/07/24
感想・レビューをもっと見る