好色入道 (実業之日本社文庫)
好色入道 (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
ロマンチッカーnao
独特の雰囲気、歴史的な地位を保ち、世界的な観光地でもあり、東京に対して憧れを持たず、逆に上から見ることが出来る唯一の街、京都。その京都の市長選に、京都の改革を掲げる東京からの出馬者が現れ、それを潰す有力者たち。その中心人物、好色坊主の秀建。とにかく、この坊主のキャラがえげつない。政策や理想で真正面から戦うことなど一切せずに、すべて色仕掛けで敵対者を潰していく。しかし、その底には、この世は地獄。その地獄を知らぬものが、理想を掲げても、底辺に暮らす者たちは、逆に苦しむことになる。その信念が怖い。面白かった。
2021/01/24
スリカータ
京都市長選挙に立候補した二候補者。敵を蹴落とす為のスキャンダル合戦。陥れようとして逆に罠にハマった元女子アナが主人公。ダークホースは饅頭を潰した様な醜男の怪僧・秀建。官能場面も含めて乱痴気騒ぎで、読み手を飽きさせない。勢いに乗った花房観音さんの手にかかると、正義は容赦なく撃ち砕かれる。秀建はとんでもない生臭坊主なのに、終盤で唱えるお経が有難いものに思えたのが不思議だった。
2023/11/16
修吉
正義の対義語は悪では無く、違う正義。そんな物語です。おもしろい。観音さんの日本海の描き方は秀逸。秀健の実家、日本海の寂れた漁村、に訪れる件が良かった。これは官能小説とかエロス小説ではないね、かといって一般小説としては筆致に力強さと言うか厚みが足らないかな…★★★☆☆
2022/02/03
桜もち 太郎
「世の中の決まり事を超えた肉の欲望が交わる姿」、そうだこれが人間の正体なのだ。魑魅魍魎とした京都の裏の世界に生きる人間たちと、エリートで正義感いっぱいな人間が京都市長選を通して何が正しいのかを問い続ける。薄っぺらな正義を振りかざす各務原と底辺から這い上がり欲望のままに生きる秀建、どちらが魅力があるのかは言うまでもない。「何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」、室町時代の唄だ。一生は夢、ただ狂ってしまえ、夢のような唄だ。欲望のままに生きることは、悪なのではないということを教えてくれた一冊だった。
2021/03/27
Katsuto Yoshinaga
「何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」と、室町時代の閑吟集に謡われた京都を、花房観音氏は官能小説として描く。私は数年間京都で過ごし、その後、仕事でも余暇でも多少行き来していた。本作で描かれる政と性について思い返すと、京都なんちゃら山と評される保守が厳然とありつつ何故だか革新だったり、大阪とも東京とも異なるクラブと風俗の雰囲気や形態があった。本作で描かれているように、京都はたしかに何か違う「感じ」がある。その違和感の結論として、本作は巧いし、面白い。(コメに続く)
2021/01/24
感想・レビューをもっと見る