少女たちは夜歩く (実業之日本社文庫)
少女たちは夜歩く (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
ナルピーチ
妖しさ漂う連作短編集は『城山』の周辺に住む人々を主人公に、恐怖の連鎖が始まっていく。それはまるで底知れぬ世界への入口、足を踏み入れた先には闇の住人達が集っていて、幻想と怪奇が支配する“魔界”へと続いていく…。宇佐美先生の本領発揮と呼べる見事なまでの傑作ホラー。一気にくるというよりはジワリ…ジワリ…と一歩ずつ恐怖心が込み上げてくる。あの話とあの話があぁ繋がって、更にはこうなっていくのか。と、どんどん闇が色濃くなっていく感じが快感といってもよい。『白い花が散る』この作品だけ明るめな内容。これはこれで良かった!
2022/01/12
アッシュ姉
★★★★★宇佐美さんらしさ満載の大好物の連作短編集。登場人物がだんだん繋がっていき、背景がどんどん広がり、物語の奥行きがぐんぐん深まっていく。ぐいぐい惹きこまれて夢中で読み耽った。どこまでも続いていく闇の連鎖。じわじわと濃くなる違和感が氷解する最終話にぞくぞく。まだ続きがありそうと感じた私も城山に暗闇に囚われてしまったのかもしれない。読む終わるのがもったいなくて、何度も読み返したい至高の一冊。
2021/10/30
itica
ある地方都市のシンボル的存在、こんもりとした低い山の頂に建つ城。人々はその城を見上げながら、あるいは囚われながら暮らす。そんな街で起こった、ホラーテイストの中にミステリとファンタジーが混在する連作的な10の話。昼なお暗い森の中で蠢く何か。人々の心に棲む鬼。常にじっとりと湿った空気にまとわり付かれた読書だったが、どんどんのめり込む気持ちを抑えられなかった。私もこの城に囚われてしまったのかもしれない。
2021/10/01
オーウェン
暗い境遇だったり、痛々しい過去。 またそれが連鎖式に繋がっていく。 宇佐見さんってダークな物語ばかりだけど、これは短編のように集められた9つの物語。 それが次第に関係のあることが分かっていき収束していく。 ミステリ的な味付けや、サスペンスにホラーとバラエティに富んでいる。 でもどれもアンハッピーエンドにしか思えない描写が多い。 命をも奪っていく奇怪な虫の存在も不気味だし、ラストの会話もゾッとした。
2022/09/22
スカラベ
城山を囲む街の中での出来事が短編で綴られる。恐らく筆者の生まれた愛媛県松山市が舞台。市の真ん中にこんもりとした山の上にそびえる松山城を、たまたま事前に映像で観たので、あたかもVRゴーグルをつけて物語の中に入り込めたような気がする。短編といってもそれぞれの登場人物は時空を超えてリンクしていたり、ある生き物が姿を変えて立ち現れたりと、一筋縄ではいかない繋がりが物語を1つの大きな闇の世界へと変貌させているかのよう。「角の生えた帽子」の短編『城山界隈奇譚』も同じ舞台。宇佐美さんの実体験が語られているのかも。
2021/12/09
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