罪と祈り (実業之日本社文庫)
罪と祈り (実業之日本社文庫) / 感想・レビュー
イアン
★★★★★★★★☆☆過去と現在が交錯する貫井徳郎の長編。元警察官の父・辰司が遺体で発見された。その死に疑問を抱いた息子の亮輔が遺品の中から見つけた一冊のファイル。それは28年前の誘拐事件を報じる新聞記事を切り抜いたものだった…。人望の厚かった父はなぜ殺されたのか。警察史上最大の汚点とされる誘拐事件との関連とは…。2つの時代に跨る〝罪と祈り〟を丁寧な筆致で描いており、まるで2冊のミステリを凝縮させたような重厚さを感じた。バブル崩壊と昭和の終焉。激動の時代に翻弄された男たちの葛藤を描いた、もう一つのロクヨン。
2023/06/01
H!deking
いやーめちゃくちゃ面白かったです。久しぶりの貫井先生。好みど真ん中でした。小説はやっぱりこうでないと。
2024/03/17
もりくに
70代後半になり、「遅読」自慢の私としては、できれば「スカ」は引きたくない。いかに面白くなかったかを分析するような、「高尚な」ことやっている時間ない。「当たり!」でした。貫井徳郎さんだから、多分大丈夫だろと。東京の「西浅草」の80年代(バブルの時代)と現在が舞台。そこに住む二世代の親友同士の父子が主役。父世代は、警察官の濱仲辰司と居酒屋の厨房勤務の芦原智士。子世代は現在失業中の濱仲亮輔と、辰司に憧れて警察官になった芦原賢剛。話は「亮輔と賢剛」と「辰司と智士」と交互に時代を行き来する「罪」と「祈り」。
2024/07/04
ミエル
貫井徳郎版「64」だろうか?読み応えはあるけど、違和感が残る。そもそも芦原家の母の存在感が薄すぎて気の毒だし、60代前後の人物の名前が現代的すぎるし、なんだか雑なミステリだなと思ってしまった。確か「翔」の字が人名に使えるようになったのは平成になってからじゃなかった?なんて、本筋以外のところが気になって仕方ない。過去の事件の真相もうーん…、警察官が犯罪に加担するほどの事には思えない。地縁が深い土地とは言え、引っ越す近所に対してそこまでこだわるのもの?濃すぎる地縁の方が怖すぎる。始終、微妙な気分だった。
2023/07/30
タケチヨ
バブル時代の好景気により不法な地上げ行為を行う不動産業、土地を売り裕福な生活を手に入れた為にノイローゼになり育児放棄の後に自殺する妻、そんな世の中に一矢報いる誘拐計画を企てる人々。様々な人物が登場する中で本作の真の『悪』を問われるとそれはやはり『時代の風潮』という事になるのだろうか。正義感が強いが故に時代に踊らされて悲しい顛末を迎える人々には哀れみを感じるものの、残された息子たちの心情を思うともう少し他にやりようがあったのではと思わずにはいられない。『罪と祈り』というタイトルがなんとも感慨深い作品でした。
2022/12/14
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