サルトル全集 (第15巻)
サルトル全集 (第15巻) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
上演時間4時間にも及ぶ長編戯曲。16世紀、ドイツ農民戦争直前の騒然たる時代状況を背景に劇は展開する。前作『汚れた手』が、アンガージュマンの演劇的実験であったとすれば、それに続くこの『悪魔と神』で、サルトルは主人公ゲッツを通して人間存在の根源的な意味を問いかけている。悪の権化のようだっであったゲッツが、骰子の一振りで善なる存在であろうと決意する。人は全き善であることは可能か。地上に全ての人が平等なユートピアの建設は可能か。そうした問いの果てに、ゲッツの絶対的な孤独と自己存在の不条理とが浮かび上がってくる。
2013/03/23
乙郎さん
サルトルの戯曲。神の不在が語られる凄まじい内容。実存主義というテーマで読み解く必要があるのだろうが、一方でそのあたりがよくわからない読者であるぼくにとっては、なんとなくコードギアスを連想したり。
2024/01/21
KUMAGAI NAOCO
ジャン・ポール=サルトルの長編戯曲。ドイツ農民戦争が起きる直前のドイツを舞台に、鉄手のゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンを主人公に、貴族と農民の私生児という、どちら側の者にもなれず悪の限りを尽くしてきたゲッツが、善の側に反ったものの悪の側にいる時よりも人々から受け入れられず、そして残虐な事が起こる。ゲッツは「神は死んだ」と言い人々との繋がりを断つが、農民達は戦いの指導者としてゲッツを迎え入れた。ゲーテが描くゲッツとは違い、一方でサルトルの書く「聖ジュネ」にも通じた、不条理からの精神的解放を表現してて面白い。
2018/06/09
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