サルトル全集 (第33巻)
サルトル全集 (第33巻) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
エウリピデスの同名の劇をサルトルが、現代的に翻案化したもの。パリスの審判―アテナ、ヘラ、アフロディテの3人の女神の中で誰が1番美しいかを競った―に端を発したトロイ戦争終結直後のトロイを舞台に、残された女たちの悲劇を描く。サルトルは攻めたギリシャ側をヨーロッパ、壊滅させられたトロイをアジアとするが、今ならそこにパクス・アメリカーナとアフガン、イラクを置き換えることも可能だろう。もっとも、’65年の初演当時はヴェトナムだっただろうが。それだけテーマが普遍性を持っているということか。崇高感と悲壮感に溢れる劇だ。
2013/04/07
nightowl
世間がバレンタインに騒ぐ中読み終えてしまった...それはともかく、裏に隠れた意味を持っている原作からサルトルの言う通りかなり理解し易いように脚色されている。例えば三女神も後の二人は土地(←こちらが原典との相違点)をあげると言ったのに対しアプロディテはヘレネを餌にしたことになっていたり、ポセイドンの無常感溢れる最後の台詞等。現代人にも響く反戦戯曲となっているのが素晴らしい。翻訳も罔象女(日本神話に登場する水の神)、苑生など冒頭戸惑うものの他は問題無し。
2020/02/14
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