大いなる夢よ、光よ (津島佑子コレクション)
大いなる夢よ、光よ (津島佑子コレクション) / 感想・レビュー
燃えつきた棒
岩波文庫の小さい活字の本を読んだせいで、ひどく肩が凝ってしまった。 そこで、読みかけの40冊の中から、癒してくれる本を探してみた。 その結果がこの本という訳だ。 なぜ、こんなにも癒されるのだろう。 それは僕にはわからないが、一つ言えることは、疲れた時は津島佑子にかぎるということだ。
2018/05/28
かもめ通信
短篇「光輝く一点を」と、長篇「大いなる夢よ、光よ」を収録。息子を突然亡くした母親が主人公で、彼女は幼い頃に父親が自殺し、中学生の時にダウン症だった兄を亡くしているという著者を思わせる設定は、既刊コレクション収録作品と同じだがその感触はそれぞれ全く異なっている。「三部作」とされるこの作品群は、元々それぞれが独立したものであるから、どれから読んでも、どれか一つ読んでもそれぞれに読み応えのある作品なのだが、こうしてコレクションとして続けて読んでいくことによって、新たに見えてくるものがあるようにも思われた。
2018/02/09
amanon
愛する者を失った悲しみ…いや、「悲しみ」という言葉だけではとうてい言い尽くせない思い。作者の著作で幾度となく繰り返され、その度に深化していくこのモチーフ。「ああ、またか」と思いながらも、つい読み進めてしまう。息子の死によって穿たれた穴を埋めようとする一連の行為は、ある意味弔いと言ってもいいのだろうか?その中で関わる数人の男性。それぞれと微妙な関わりを持ちながらも、最終的には平行線のままというのが妙とも言えるか。また、後に幾つかの作品で見られる伯父とその一家というモチーフが本作でも見られるのも興味深かった。
2018/01/20
田中峰和
著者の実人生が色濃く反映された物語。主人公章子の父は幼い頃自殺し、ダウン症の兄を中学の頃亡くし、私生児として出産した息子が病没するところも津島と共通する。途中からひらがなを多用した記述が現れ、読みづらさのせいで視点同様、思考も行きつ戻りつする。ちょうど夢の中を覗くようで、彼女自身の現在を見つめると同時に、これまでの人生を見つめ直す作業を続けさせる。初恋の人であった叔父達夫は65歳となって一時帰国。寒いだろうと自分のベッドに招かれ添い寝する38歳の章子。死んだ息子同様、初恋の人も夢の中を彷徨い、惑わされる。
2018/01/12
ameco
幼い息子を亡くした女性のお話。八歳の息子を突然の発作で亡くした章子の、拠り所なく不安定な混乱と悲しみが、痛々しいほどに文字を伝って流れ込んでくる。現実と夢のあわいを仕方なく生きているような印象の章子が、まわりにそっと支えられ、誘導され、再び今を生きようとする姿は何だか眩しく感じた。
2018/12/30
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