野の医者は笑う: 心の治療とは何か?
野の医者は笑う: 心の治療とは何か? / 感想・レビュー
ゆいまある
京大(更に栄光)卒心理学者による、医者ではない治療者(スピ系など)の研究。そっち系に取り込まれる話ではないかと思って敬遠していたが、業界内でも評価が高まる一方なので購入。文体が高野秀行さん丸パクリ(高野さん公認どころか絶賛されてる)。失業中にやさぐれた自身を癒やす目的も兼ねてフィールドワークしており、治療を受けつつ研究するという矛盾した態度の為前半は混沌としている。心の治療とは何かを問い直す示唆に富む内容。女性を女の子呼ばわりする様などはミソジニストを思わせるし、傷つき故の怒りが目につき私は笑えなかった。
2022/05/15
本詠み人
『居るのはつらいよ』の続編という位置づけだが時期的に少し被っている。前作で出てきた授賞式で、研究助成金をもらい行ったフィールドワークの記録と考察。「心の治療とは何か」、沖縄で活躍している「野の医者(ユタやスピリチュアル系の治療者)と臨床心理士の治療の違いは何か」問いを立て、試行錯誤しながらその答えを追い求めていく…前半のふざけた描写から後半に進むにつれ明らかになっていく野の医者の技法。そこから滲み出すように輪郭を現す臨床心理学。教科書には書かれていない臨床心理学という学問の確かな姿をそこに見た。
2022/07/22
禿童子
沖縄在住の臨床心理士がトヨタ財団の賞金95万円を獲得して、スピリチュアルヒーラー「野の医者」の世界に潜入取材した記録。まるでノンフィクションノベルかルポルタージュのような雄弁な文章で一気に読める。面白おかしい描写のあいまに真面目な考察が入り混じる。臨床心理学と野の医者がしている治療のどこが同じでどこが違うのか。東畑さんはついにマインドブロックバスター(?)の資格を取得して当事者になる。沖縄のスピリチュアルブームは20年ほどの歴史しかないが、その源流をたどると、なんと臨床心理学の本家と生長の家にたどり着く!
2022/05/24
Akihiro Nishio
怪書である。臨床心理士がスピリチュアルを使って活動するヒーラーたちを取材し、スピリチュアルとは何か、さらに心理学とは何かという巨大なテーマに立ち向かうフィールドワークである。自分は、宗教なら何でもいける口だが、スピリチュアルには疎く、手相も占ってもらったことがない。まずはタロットでも何でもやってもらいたい。前半早々に、スピリチュアルの核心には迫っているのだが、後半マインドブロックバスターの資格講習に参加して、もう一段発見があるところも良い。臨床心理士の雑誌で見たが高野秀行氏の文体に影響を受けたという。
2016/10/12
くさてる
これは面白かった!臨床心理士が沖縄のスピリチュアル業界に潜入し、混沌としたその世界を体験しながら「心の治療」の本質を探していく内容。語り口が実に軽快でコミカルで読みやすいのだけど、そのなかに人間が本当に求めていることや人を癒すということの意味を深く問う部分があって、とても興味深い。カウンセリング、疑似科学や自己啓発に興味がある人にもおすすめですが、不思議な業界に体当たりで飛び込む冒険譚としても面白く読めます。おすすめです。
2015/12/13
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