増補 思春期をめぐる冒険:心理療法と村上春樹の世界 (創元こころ文庫)
増補 思春期をめぐる冒険:心理療法と村上春樹の世界 (創元こころ文庫) / 感想・レビュー
Yuko
村上作品を読み解きながら思春期について考える。子どもたちをめぐる状況を想いながら読んでいたら辛くなった。子どもたちのことばかりでなく、これは自分自身の苦しさかも。私自身が思春期に自分と深く向き合うことから逃げてきたのだろうか?そして相変わらず今も逃げてる!?ハルキ作品をこんな風に深く読めるようになったのは年と経験を重ねたからだろうが、多層的な現実の中に自分の本当の物語を生きられるようになるのだろうか。
2020/02/06
かがみ
村上氏にとっての創作とは多くの場合、自らのうちにあるメッセージを探し出す自己治療的行為であるという。そして、本書はこうした氏の創作姿勢には心理療法の過程と相通じるものがあるという。すなわちそれは〈物語〉を見出し〈物語〉を生きていくということである。それは「あちら側」の非日常と「こちら側」の日常の中に自分を位置づけていく過程に他ならない。システムに抗い、個としての日常を生きる上で必要なのはまさに〈物語〉である。文学的想像力と臨床的想像力を架橋する本書は極めて実践的な村上春樹論である。
2020/08/05
ネギっ子gen
【合点】74頁。「社会的な地位のある男性が、思春期との関係が公になったことで職を失ったり」する。「分別も地位も、妻子もあるだろうに、なぜ、そんな人生を棒に振るようなことを!」と世間は疑念を呈す。その回答。「援助交際というような形で、思春期を買うようなことをしていると、日常の理が一切通用しない恐ろしい異界のエネルギーにのみ込まれて現実適応を徹底的に崩されてしまう危険もあるのだ」と。人生に手詰まりになると、打開の策として日常性を超えた体験を求める。しかし、それを援助交際に求めると落とし穴に落ちるということか。
2020/01/28
にくどうふ
心理臨床について学んでいる過程で耳にしたタイトルが気になったので読んでみた。 村上春樹作品に惹かれる人にとっては、何故惹かれるのかをより深く理解するのにつながる本なのだと思う。逆に、昔、村上春樹を何冊か読んではみたがイマイチ響かなかった私にとっては、その理由がわかったような気がした。その時の私には必要なかったということなのかもしれない。 じっくりと事例を交えつつ話が進むので、心理臨床が何をするものなのか、理解を進める上で役に立つ良書ではあったと思う。
2019/09/07
ぐり
大人になってしまったわたしたちは、どうしてもこちら側にいないといけないから、あちら側を時々求めたくなって村上春樹を読むのかもしれない。思春期のときは、作品があちら側のガイドになってくれるところがあるのかな。何かの節目にわたしも井戸に降りたくなってねじまき鳥を読み返す。
2017/03/27
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