河合隼雄のカウンセリング入門:実技指導をとおして
河合隼雄のカウンセリング入門:実技指導をとおして / 感想・レビュー
スノードロップ
本書は、河合隼雄氏による四天王寺のカウンセリング講座(実技指導)の記録をまとめたもの。河合先生と参加者の皆さん(初心者含む)とのやりとりがメインです。読めば読むほど、カウンセリングの奥深さと、それを方法論として伝えることの難しさを考えさせられます。河合先生のお言葉からは、カウンセラーの逃げや甘えを許さない厳しさと、クライエントが奥底に持つ立ち上がる力を信じる優しさとを両方感じることができました。
2021/05/28
ぺったらぺたら子
「聴く」とはどういう事なのか。解決のための答えを出して与える事とは逆で、そうではなく本人の中にある答えを引き出していくための環境を作る事。その為には相手を尊重し、決して判断を挟まずに意見を押し付けない事。整体において野口晴哉は外から「治す」のではなく、飽くまで治癒力を引き出すきっかけを作る事だという姿勢を「生命への礼」と呼んだが、それと同じ考えなのだと思った。会話は勿論、他者との関わり方について非常に学ぶところがあった。カウンセリング自体に興味の無い人にも是非読んで欲しい。ものすごく反省させられるので。
2023/10/13
riviere(りびえーる)
社会状況の変化によって仕事上色々なことをやらなければならないときがある。そんな時原点に帰るため読む本が何冊かあってその中の1冊。前回読んだのは9年前。今回特に心に残った箇所は「限界」についての論議と「正直であれ(つまり自己一致のことだと思うけど)」そして沈黙の対処について。一般の参加者に向けてカウンセリングとは何かを37歳の河合隼雄氏が一生懸命伝えようとしている。その姿が伝わってきて、伝え方も参考になった。
2018/08/18
あこ
カウンセリング講座の実技指導を通して語られた内容。カウンセリングは「悩みを正面から悩む」もの。そういう意味では、非常に厳しいもの。聴いてくれるという嬉しさと、だれにも言ったことのないことを言わねばならないという辛さ。◇クライエントの沈黙、それを待つ意味とは…そこから出てくる言葉とは…、沈黙に耐えられずにカウンセラーが尋ねると、どういうことが起こるか…、問題を予測して話を誘導していくとどうなるか…、クライエントの心の外に立っているカウンセラーとは…など、私が気にとめた所山盛り。
2014/10/16
roughfractus02
カウンセラーには徹底して「聴く」力が求められるという主張は他の本と同じだ。が、本書は学校、職場、結婚、精神分析と4つのケースを設定してカウンセリングの実技指導を行う際に起こりうるカウンセラー能力と自身の心の限界に向き合う場面が詳細に記される。著者はカウンセラーたちとの質疑応答の中で、統合失調症や躁鬱病は専門医に任せることはもちろん、クライエントが悩みを話しつつ自分の考えを整理する過程で、その深みについて行くカウンセラー自身も悩み始めて耐えられなくなる場合も出てくることを、自らの臨床経験から丁寧に例示する。
2023/01/11
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