つげ義春が夢見た、ひなびた温泉の甘美な世界 (ビジュアルガイド+C(カルチャー)シリーズ)
つげ義春が夢見た、ひなびた温泉の甘美な世界 (ビジュアルガイド+C(カルチャー)シリーズ) / 感想・レビュー
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1967年2月の「通夜」から68年8月の「もっきり屋の少女」までの14作品について、著者は「奇跡の二年間」と呼ぶ。中でも「ねじ式」と「ゲンセンカン主人」を小学生の時、目の当たりにしてしまい、いまだにその衝撃が冷めやらぬ様子。実父の狂死、幼い頃の赤面恐怖からくる人間嫌い、蒸発願望等が混じり合ったマグマが、この二年間に噴出したというのが著者の目立てだが、それだけではないと思う。著者は触れていないが、その頃出会った宗教が創作活動の多大な影響を与えたのでは。ヒントは「ほんやら洞のべんさん」に少しある。
2023/04/29
阿部義彦
こんな本が拾えるからブックオフ通いは辞められない!今年1月に出た本です。みらいパブリッシング刊。著者はライターでwebマガジン『ひなびた温泉研究所』の所長。そんな岩本さんがつげ義春の辺境漫画3編(ねじ式、ゲンセンカン主人、やなぎ屋主人)の世界を、当時のつげさんの心境とダブらせて解説します。又本書にはセルフポートレート写真家マキエマキ氏の作品『つげ義春を巡る旅』も同時に掲載して昭和のエロを堪能できます。ゲンセンカンで、蒸発者が取り込まれる異空間を描き、やなぎ屋でそこからの生還を果たす。幽霊作家の足跡。
2023/06/11
りえぞう
最初のほうはまじめすぎて面白くなかったけれど、中盤、つげさんの漫画解説あたりからがぜん面白くなる。最後はひな湯研究所のお気に入りの湯について。いやあ、どこも一度は行ってみたい、滅びる前に。
2023/11/06
海猫兄弟
これまでつげ義春の作品とは無縁の生活を送って来たが、ひなびた温泉が好き故にこんな形で邂逅するとは思わなかった。やなぎ屋主人の様に外房で夜の浜辺に寝そべり、ついて来た猫と蛤を分け合いながらウィスキーを飲み、その猫の肉球を両まぶたに当てて冷たさを感じる。そんな旅をしてみたいと思った。コロナ禍以降は旅行需要も急速に復活していて、田舎の鉱泉宿でさえ満室ですと断られることもある。つげ義春的世界が光速で消え去る今、昭和のひなびを伝える貴重な資料といったら言い過ぎか。マキエマキのもっさりヌードがセルフ撮りなのも驚きだ。
2024/09/22
チョビ
つげ義春が好きな温泉研究家のエッセイおよび解説本。当時稲田堤に住んでいた私は、通販生活に掲載されていた、ひなびたを超えた温泉への家族旅行漫画を読んだことがあるが、それが「無能の人」だったことを知り驚く。だが、つげの魅力はそれだけじゃないし、そもそも彼にとっての温泉とはいろんな思いが存在するということに納得した。そして、今の「映え」に夢中のおねーちゃんがたがそうした温泉に行かない理由も。また読んでて、あれだけマーケティングに寄り添った「カムイ伝」が古くならない理由も確信を得た気がした。
2024/02/19
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