且坐喫茶
且坐喫茶 / 感想・レビュー
そうたそ
★★★☆☆ いしいしんじさんの様々な場所での茶道の体験を一冊にまとめたもの。エッセイという体裁こそとられているものの、茶道という文化そのもの、茶室という空間、茶道に臨む上でのいしいさん自身の心情等、様々なものの描かれ方に、いしいさんらしい言葉選びの味わいが感じられ、そういう面ではエッセイを読んでいるというよりも、むしろいしいさんの小説世界に飛び込んでいるかのような感覚であった。茶道に触れる機会なんて今までなかったし、これからもまずない気はするのだが、読んだこの瞬間だけはやはり茶道に興味を持ってしまう。
2016/05/23
ほっしー
著者が亡き茶道の師匠へ向けて書いた随筆集。書名の“且座喫茶”とはしばらく座ってお茶でも飲もうよという意味。著者が赴いた茶会での出来事が淡々と綴られているおり、全体的にゆっくりとした時間が流れていた。「お茶とは、旅ではないか」という一文が印象的だった。余計なことは考えずにただお茶のことだけを考える時間を持ってみたいなあ。いつか茶会に行ってみよう。「お茶って、わかりません。でもね、そこがいいのよ。わからないから、たのしいんじゃない」
2018/03/16
スイ
「真剣ですよ、いしいさん、真剣よ。あいまいに生きていて、いったい、なにがおもしろいもんですか」 作家のいしいしんじさんが、幾つかのお茶席について書いた随筆集。 茶道を文章で書けるんだ!というのにまず驚く。 平易な言葉、しかしとても新鮮な世界を見た。 胸に染み入る文章だった。 何を見ても、何を感じても、いしいさんの心は亡くなった茶道の先生に還っていく。 あるいは、先生の周囲を回り続ける衛星のようでもある。 茶道だけでなく、人が人を思うことや、生と死を静かに突きつけて来るような本だった。
2018/05/09
のりたまご
「且坐喫茶」とは禅語で「まぁ、しばらく座ってお茶でも飲もうよ」という意味。作家のいしいしんじさんが書かれた茶の湯にまつわるエピソードは、まさに亡き先生とのお茶を通しての邂逅だ。お茶は花や書、香り、建築、味、ことばなど近世日本の美意識を含んだ総合文化といわれ、ならばそこに死生観がはいりこまないわけがない。いしいさんは「お茶」を「生き物」や「血」のようだと例える。一見のどかな静寂の中に、「たたかい」の残り香を感じる。「真剣ですよ、いしいさん。真剣よ。あいまいに生きていて、いったいなにがおもしろいもんですか」
2021/09/29
tsubamihoko
いしいしんじさんとお茶?という所から気になり読んだ本。茶の湯の世界は形から入るというが、そこからが奥が深い。わからなくて当たり前、無理してわかったふりをする必要はない。この本を読んでいてお茶の世界は、哲学のようだなと感じた。森下典子さんの『日々是好日』に書かれていることとも通じるような気がしました。
2020/11/08
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