飛石を渡れば
飛石を渡れば / 感想・レビュー
nobby
「私、お茶を習ってみようと思うんだけど」なんて思ったこともない(笑)茶道とともに取り上げる茶碗・庭園にもほとんど興味持ったこともなく、嗜む和菓子よりも洋菓子の方が好き…とにかく重なるところ皆無な自分だったが、のんびり優雅な読書を楽しめた♬140頁中編の後で10頁短編が12つ並ぶ構成が異様だったが、そこにミステリ作家の醍醐味を見事に発揮!人物に事柄に秀逸に繋がり思い出させるのはお見事!一色さんは芸術を分かりやすく優しく解説しながら、些細な不思議を埋めていくノンフィクションとミステリの間を行くこの作風がいい!
2022/01/15
あすなろ
茶道は総合芸術。その入り口である飛び石を渡れば…。飛び石はその別世界への導入部。僕は全く茶道のことは体感として知らぬ世界。でも、この作品でそこに現代においても揺蕩う世界観に身を少し委ねられたのである。そして、人が普段の生活や仕事から離れて得られるもの。そうした得難い大事な物に本作品で少しだけ触れられた気がした連作掌篇集だったのである。但し、冒頭編である短編が飛び抜けて良かった気がする。これは頁数の問題であるのかないのかは分からないが少しだけ惜しい。冒頭編の短編が良すぎてその後の掌篇集が散漫な感が…。
2021/06/13
みかん🍊
茶道の先生をしていた祖母が亡くなって1年、星那は片付けを手伝う事になり、茶室の道具を見ているうちにお茶を習ってみようと思いつく、祖母の残した古き良き物を残したい気持ちはあるが何もかも残すわけにはいかない、しかし物や形はなくなっても歴々と受け継がれてきた影響を与えてきた人間関係や繋がりはなくならない、祖母は沢山の人に影響を与えその関係は孫へと引き継がれる、茶道、陶器、そしてちょうと和菓子の小説を読んだばかりだったので季節や意味のある和菓子と日本の古き良き物に触れられた。
2021/03/04
アン
「浮世から離れる旅へとお連れしますよ」飛石について教えてくれた亡き祖母の茶道具を整理することになった星那。受け継がれた茶室のある家と金継の施された貴重な茶碗の行方をめぐる表題作と祖母に纏わる掌編集。星那は静謐な茶室でのお稽古を積み重ね、巡る季節の美しさ、茶碗が繋ぐ緩やかな縁や心和む一服の尊さに気付いていきます。私もお点前で抹茶の温もりに触れ安らぎを得たひと時が蘇ります。心を整え心を尽くす茶道の奥深い魅力を通し、未来の扉を開ける勇気をそっと与えてくれる物語。飛石を渡ればきっと豊かな風景が広がっているから。
2022/02/01
Kei
他社のお茶に関する著作、映画の大ヒット、日日是好日を、本来、お茶専門、淡交社が、指くわえて歯ぎしりしていたのがわかる、本書プッシュです。(笑)しかし、そこは淡交社!若い女性二人が習う図式は同じでも、京都で、亡くなった祖母という茶人を中心に、夫婦、仕事、所作にはじまる生き方にまで言及。ちょっと高尚。でも、お花、お菓子、お庭、お道具、とっても楽しいです。滅びゆき、変化せざるを得ない現状も。主人公の周りの茶人が個性的で素敵でした。
2021/04/28
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