鴎外その側面 (筑摩叢書 189)
鴎外その側面 (筑摩叢書 189) / 感想・レビュー
ひばりん
日本近代文学批評史上、これより難解な書物はそうみられず、いかにマルクス主義批評と鷗外の相性が悪いかが分かる。鷗外は社会的に偉すぎた訳だが、偉すぎることを批判しても唯の悪口なので、内容に進む。すると今度は鷗外の書くものがあまりに超然主義的なので取り付く島がない。それで苦闘を強いられているのが、本書の中野重治である。論理論点が錯綜し、多くの読者を悩ませるが、根本的には「なぜ鷗外が文学を書いていたのか誰にもよく分からない」ということに帰着するのではないか。養老孟司の「下痢説」を横に置くと、有力な説はあまりない。
2021/02/20
モリータ
◆最近安く買ったのを大西巨人批評集から。原著は1952年筑摩書房。作品集の解説文等も含めた鴎外論の集成。◆小谷野先生のブログにもあるように「遺言状のこと」等、意味がわからん部分もあり、構成や引用の意図が明確でないと、鴎外案内としても学問としても読み辛い。個人的には、面白い基礎評伝類を求めたい。◆本書に限ったことではない個人的な感想だが、AがBについて書かなかった、ということに深甚な意味を持たせようとする論には魅力を感じない。◆翻訳とその文体について二葉亭四迷と比較するのは(考察対象として)面白いと思った。
2020/08/31
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