「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)
「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書) / 感想・レビュー
ころこ
確かに「新しい生活様式」は「新生活体制」を想起させます。大政翼賛会に代表される社会が概ね一致して全体主義的な方向に舵を切っていた時代がまた到来したという懸念は持たなければならないでしょう。しかし、むしろ野党から「ゼロコロナ」という形で提案されている様に、なぜねじれが生じているのか。本書の分析の構図は近代イデオロギーの問題として単純化され過ぎているのではないかという疑問と共に読みました。この問題は「新しい」のではなく、古い日本人の根底にある「穢れ」のようなものではないか。むしろ「断捨離」やバブル後に流行った
2021/03/30
踊る猫
流石は大塚英志だ。アクチュアリティが非常に高い問題設定に唸らされる。私たちに身近な「暮し」は「政治」と一見すると離れた、平穏なセーフティゾーンのように感じられる。だがその内側から、つまり「暮し」を汚染するようにして(失礼!)「ファシズム」が忍び寄る可能性/危険性について、『暮しの手帖』や太宰治の小説などを引きながら大塚は論証していく。大塚がすごいなと思うのは、カルチュラル・スタディーズなどの「箔」をつけずに日本の文脈だけでこの難題を論じてしまったところ。そしてここで提起された問題は「現在進行形」であるはず
2021/07/25
遊々亭おさる
対米英戦を睨み、近衛文麿内閣が提唱した翼賛体制とは国民の暮らしに政治が介入し、国民一人ひとりの意識を改革しようとした取り組み。それは「進め一億火の玉だ」のような勇ましいプロパガンダではなく、断捨離といった今日の我々の生活に密着した日常生活の推奨であった。そしてコロナ禍の現在、再び政治は国民の生活に介入を始めた。その先にあるものは…。自粛要請じゃ生温い。政府はロックダウンに踏み切ってくれといった声が国民から上がるほど全体主義との親和性が高い日本人。軍靴の足音が・・とは思わないが泥沼に嵌る危険性は秘めている。
2021/06/02
ochatomo
題名に惹かれて もう少し短くまとめてくれると読みやすいだろう 皇紀2600年の1940年、第2次近衛内閣は新体制運動を展開し『大正デモクラシー的な理想が“国策”に搦め取られ』『確実に“日常”や“生活”に新しい輪郭を与え具体化』した 『家でできる社会参加』として節約・工夫、断捨離はこの頃にもあったそう “女文字”プロパガンダの担い手だった「暮しの手帖」創刊の花森安治氏や太宰治氏について知らなかった面が多い 2021刊
2021/07/29
かんがく
コロナ禍で注目された「新しい生活/日常」という概念が、戦時下のプロパガンダにおいても繰り返し用いられていたことを、雑誌、小説、漫画、服装などの文化を通して分析していく。「生活/日常」という女性の領域とされがちな部分に、「戦争」がどのように侵入していったかという研究は面白い。
2023/04/29
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