日本回帰と文化人 ――昭和戦前期の理想と悲劇 (筑摩選書)
日本回帰と文化人 ――昭和戦前期の理想と悲劇 (筑摩選書) / 感想・レビュー
ぷほは
勉強になったし在野の文筆家である著者に対して問題設定の厳密さや方法意識の欠如などを指摘することに、余り意味はないだろうが、ネットを軽く巡回すれば手に入りそうな記述が多いのも事実で、それは著者がこれまで書いてきたSFや探偵モノといったジャンル内の局域とは異なる次元に「日本」や「回帰」や「文化人」といった用語の厄介さがあることによると言えるだろう。何より昭和10年代に「日本回帰」した文化人たちをまなざし、回想している著者本人が「戦前回帰している文化人」めいて見えてしまう、その再帰性にどれだけ自覚的であったか?
2021/07/27
Lieu
教科書的な記述だが、明治の反・洋椅子、反・ランプの言説など知らないこともあり、勉強になった。日本浪漫派の保田與重郎の「イロニー」の評価についてはこの通りだろう。蓮田善明や伊藤静雄はどうか。本書を読むと、知識人たちが欧米留学中に受けた屈辱や失望が、彼らの日本回帰の思想に与えた影響は少なくないと感じられる。
2022/01/10
onepei
けっこう辛辣
2021/06/03
安土留之
近代日本は、「西洋憧憬」と「日本への回帰」の間で揺れ動いてき。そして昭和10年代、日本回帰、日本賛美が「エコーのように」鳴り響き、戦争に突入していった。どうしてなのか、という問題意識で、著者は当時の文化人の言説を追いかける。 私自身の関心領域なので読んでみたが、期待はずれ。30人以上の文化人が取り上げられているのだが、どれも短い叙述なので、心理まで踏み込んだものではない。この時代に馴染みのない若い読者には入門書としていいかもしれないが、このテーマに関心ある人にとってはちょっともの足りない。
2021/05/21
Go Extreme
西洋憧憬と日本への思慕:欧化への抵抗 政教社の国粋主義 岡倉天心 新渡戸稲造 国家社会主義という第三の道 水戸学・ファシズム・皇国史観 文学者たちの「日本回帰」:プロレタリア文学から文芸復興へ 永井荷風 谷崎潤一郎 堀辰雄 横光利一 坂口安吾 戦意高揚する詩人:近代詩歌と軍歌 日清戦争 日露戦争の記憶 日本文化観の模索:国策としての国民精神文化 日本精神と変質する科学主義:イデオロギーとしての日本精神 大東亜戦争は王道楽土の夢を見るか:西田幾多郎 三木清 京都学派 それぞれの戦後:死んだ者・生き残った者
2021/05/11
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