考現学入門 (ちくま文庫 こ 2-1)
考現学入門 (ちくま文庫 こ 2-1) / 感想・レビュー
keroppi
ある学芸員の方から今和次郎のことを聞いた。私はよく知らなかったので、今入手出来るこの本を買った。彼は、関東大震災を境に考現学なるものを始めた。考古学に対しての考現学。とにかく今を採取し今を見つめるのだ。誰も見向きもしなかっただろうことを執拗に観察記録する。炉端や家、道ゆく人たち、机の上、露天大道商人の人寄せ人だかり、等々。井の頭公園自殺場所分布図なんてものもある。それをまた細かく絵にしてある。この絵だけを見てもアートである。今見ると、この時代の文化が見える。マーケティングとも言えそう。凄い人がいたものだ。
2024/01/14
はちてん
元祖トマソン。なんだろうこの偏執狂的行動力。踏み込み方が入門ではありません。楽しくて身悶える。著者今和次郎は関東大震災後バラック装飾社と考現学を始め、風俗・服飾・家政などにおよぶ。見よ!この手書きのイラストを!かの河童氏を越える!いや著者が先駆だった。「洋服の破れる箇所」「井の頭公園自殺場所分布図」「本所深川貧民窟付近風俗採集」などなど興味は尽きない。決してふざけではない真面目な著作で資料的価値も高い。著者が2015年の今を見たら…。
2015/03/04
いちねんせい
大正時代にこんなことをやっていた人がいたなんて。例えば東京銀座街風俗記録では、京橋から新橋の歩道を歩いている人の性別、年齢層、髪型やら、ネクタイやら髭やら和服と洋服の比、スカートの丈、足袋の色やらが絵とともに詳しくまとめられているのだけれど、とても面白く、へぇー!とか、はー!とか言いながら読んだ。この人が平成を見たらなんと言うだろう。昔住んでいた場所は1920年代はこんな風だったのかと思い、井の頭公園にいる人の観察とか茶碗の欠ける箇所など、そこ?!と思うようなところも細かく記録されていて堪能した!
2016/01/14
まふ
「考現学」の創始者である著者の古典的力作。と言っても「学問」までには至っておらず、「そうありたい」的願望の発露。一応「理論」的解説はされるがどこまで「学問」に近づいたかは判定が難しい。「考古学」の現代版が「考現学」だというが、気持ちはよくわかる。衣食住のうちの食を除いた部分の観察記録だと思えばよいか。観察だけに図示する必要があり、絵が上手でなければならない。今氏は芸大の図科を出ているので絵がうまく、よくわかる。だが、観察し、データが揃ったところで「何が分かったのか」が分析できないと難しい。
2021/11/27
ymazda1
街を歩く人の服装とかの細かな統計を、自説を唱えるためではなく、言わば、「現在」を保存するために、地道に作成しつづける作業には、まさに、考古学⇒考現学という表現が似合ってる気がする。 たとえば、過去にケミカルウォッシュが流行ったという事実はあっても、その当時の人がどういう割合でどういう服装をしていたかは、今となっては簡単には判らないわけで、考現学みたいな「現在」を保存する学問がもっと大切にされてもいいんかな?って思った。
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