シルヴィーとブルーノ (ちくま文庫 き 3-1)
シルヴィーとブルーノ (ちくま文庫 き 3-1) / 感想・レビュー
Koichiro Minematsu
ルイス・キャロル晩年の長編小説。少女を愛し生涯独身のキャロル。妖精の世界と現実世界の狭間に、子供の人格成長を願うキャロルの優しい気持ち、また反対の強ささえも伺える。イギリスと日本という島国だからこそ、共感する世界観があるんではないだろうか。
2020/04/28
ヴェルナーの日記
現実世界と妖精世界が、混沌としながら、ストーリーが進むダブルプロットの物語。妖精界のシルヴィーと、弟ブルーノは、叔父たちの陰謀により、宮廷で冷遇を受ける。そして、旅に出た父親の後を追う。一方、現実の世界では、主人公の僕(キャロル自身)の親友アーサーが、恋わずらいし、それをうまく成就させようとするのだが、恋のライバルが現れる。2つの物語の展開が複雑に入り組み、両世界の隔たりが殆どない。妖精世界は主人公しか見ることができず、白昼夢のように突然現れる。しかし、シルヴィーとブルーノは、その後どうなったのだろうか?
2014/04/18
evifrei
キャロル晩年の小説。妖精の姉弟シルヴィーとブルーノの住む夢(というか微睡み)の世界たるフェアリーランドと、大人たちの住む現実の世界での物語が、フィルムが切り替わるかの様に交差しながら展開される。主人公が転た寝をしたときに妖精の世界と交感可能なようだが、突然に眠りかけて妖精の世界に吸い込まれていく様は、些かの不気味さもある。相変わらずの言葉遊びとナンセンスだが、若い頃の作品と比べると、随分と作品の赴きは異なる。最後の方で出てくる時間の概念を覆す時計はキャロルの時間観を垣間見る事ができ、キャロルファン必読 。
2019/12/03
roughfractus02
世界は人の口を通して語られる物語でエピソード化される。19世紀産業社会で子供の教育用に発展するフェアリーテールにひねりを加える作者は、<出発-冒険-帰還>の型を早回しながら妖精の姉弟を夢想家の語り手の元に何度も出現させてアウトランドに誘い、その間、語り手の現実に起こる出来事をさし挟む。後半その頻度が逆転して列車内の男女の恋愛物語に移ると、その女性ミュリエルは妖精シルヴィーに似てくる。作者によれば、妖精は夢の側にいるのではなく、夢と現実を往還して物の見方によってどちらにも変わりうることを示すその役割である。
2020/10/13
夜明けのナッキー
キャロルの言葉遊びは健在。非現実と現実が混合した物語。初めは現実世界のふとしたきっかけが夢世界の入り口になり、そこからシルヴィーとブルーノの物語が展開されていたが、途中から現実世界にシルヴィーとブルーノが妖精として現れてくる。現実の世界に入り込んだおとぎ話。心がときほぐれるような心地よさがたまらない。
2011/12/19
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