骨董屋 上 (ちくま文庫 て 2-5)
骨董屋 上 (ちくま文庫 て 2-5) / 感想・レビュー
のっち♬
賭博で破産し、経営する骨董屋を高利貸しに差し押さえられた老人は孫娘ネルとあてどない放浪の旅に出る。冷酷非情な資本主義の産業社会の中、純情可憐な少女と助けようとする少年キットの奮闘に一喜一憂しながらのロードノベル的な進行で、貧しくとも心豊かな人間性への共感が見られる。陰険で狡猾な高利貸しを筆頭に、悪徳弁護士、大道芸人の一座、蝋人形を見世物にする女主人など人物造形のインパクトは圧倒的で、世界観に強烈なコントラストを齎している。活気のなさには著者の疲弊も感じるが、即興的にこれだけのものを繰り出す想像力は流石。
2018/02/01
NAO
再読。何ともいえない危険な匂いの出だしは、ビクトリア朝の闇の深さを感じさせる。孫娘のネルを溺愛するあまり財産を増やそうと博打に手を出した骨董屋の老人は破産し、高利貸しのクウィルプから逃れるために老人とネルはあてどない旅に出る。店を離れて以降は、ネルと祖父の位置が逆転してしまっており、生活の辛さ、厳しさがすべて幼いネルの肩にかかってくる。ネルは、貧困をはじめとした社会悪に苦しめられる人々の象徴。だからこそ、発表当時誰もが夢中になって彼女の身を案じたのだろう。
2016/02/17
彩菜
ページを開くと暗い夜の散歩道。一人の少女が現れます。可愛いネル。道に迷ったという彼女の手を取って…物語の始まりです。導かれた屋敷には古びた骨董と老いた祖父、そして一人の下町の少年が出入りしています。子供の生活の喜劇の部分を体現しているような少年キット。一見幸福なこの家は何処か不安で薄暗く、それは沢山のガラクタの為だけではないようです。祖父はネルの為に間違った道へ進んでおり、物語は此処から二つへ別れてゆきます。屋敷を追われたネルと祖父のあてどない旅・その悲劇と、彼等を探し追うキット達の群像劇・その喜劇と。
2024/07/15
田中
ドストエフスキーが影響を受けた長編である。借金して博打に狂う祖父が破産し醜悪な金融業者クィルプに住まいを占拠された。孫娘の少女ネルは、祖父を守るため一緒に逃亡の旅にでる。少女は、わびしい道中で施しを受けたり、半端なお手伝いをしてわずかばかりの駄賃を貯める。が、祖父が盗み取ってしまい賭博で全部すってしまう。本当に情けない酷い祖父でネルがかわいそうだ。本著の孫娘と祖父の関係性を原型に組み込んだのが、ドストエフスキーの名著「虐げられた人びと」こちらは祖父が孫娘ネリーに乞食をさせお金を取りあげる陰惨な話でもある。
2022/09/20
ゆーかり
長期熟成本をやっと。ディケンズ4作目の長編小説。骨董屋を営む老人とその孫娘ネル。高利貸しクウィルプから逃れあてどのない旅に出る。発表当時イギリスのみならずアメリカでも人気を博した作品なのだが、読みにくいのは元々のディケンズの持って回った文章に加えなんとなく分かり難い日本語、主人公側の人物に共感出来ないことか。キットやスウィヴェラーはディケンズらしい人物。パンチ&ジュディ一座に蝋人形マダム、ジャーリー夫人。謎の独身男の登場でこの後展開が?*解説に下巻の重大なネタバレがあるらしいので読まずに下巻へ。
2016/01/30
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