新釈雨月物語,新釈春雨物語 (ちくま文庫 い 24-1)
新釈雨月物語,新釈春雨物語 (ちくま文庫 い 24-1) / 感想・レビュー
ヴェルナーの日記
本書は上田秋成作の”雨月物語”と”春雨物語”を新訳したもの。両作品とも江戸時代に創作され、系統をたどれば井原西鶴の浮世草子の流れを汲む。よって流れるような文語体で構成された流暢な美文調に仕上がっている。内容は仏教系を中心とした”日本霊異記”や”今昔物語”とは一線を画し、訓話といった説教めいた感じは一切しない。同じ江戸期に創作された都賀 庭鐘の”古今奇談英草紙”や”剪灯新話”といった中国から伝わった話で編まれている。個人的には「菊花の約」「夢応の鯉魚」「蛇性の婬」「天津処女」「樊噲」辺りが面白かった。
2017/01/24
KAZOO
石川先生は古典を料理するのがうまいと思います。春雨物語も雨月物語も愛読書の一つですが、現代語で書いていても人間の怨念をうまく浮き上がらせています。私は白石加代子さんの古典版の朗読を持っているのですが、この現代語訳でもやってもらいたい感じがしました。
2014/11/22
まめ@暫くイン率落ちます
摩訶不思議な現象、現かはたまた夢か。雨月物語と春雨物語二本立てでしたが個人的には雨月物語の方が興味深く読めました。「菊花の約」なんかは視点を変えると人情味溢れる話としても成立ち今で言う世にも奇妙な物語の様でした。また天皇に纏わるものや遣唐使のり空海、樊噲や歴史に沿いながら進んでいくのも特徴的かと。陰陽道の理や道教など具体的な事柄に寄り更に読む者を引き込ませて今尚読み継がれる作品として残り続けているのでしょう。
2018/09/26
loanmeadime
4年ぐらい前に、三弥井古典文庫を借りてきて読んでから、雨月物語二度目です。その時はあまり感じなかったのですが、巻頭「白峯」の調子の良さに驚きました。が、原文を紹介したサイトに当たると、これは原文の良さをそのまま踏襲したもののようです。・・・「春雨物語」は初めて読みます。始めの2作は少しシンドかったのですが、「海賊」で調子が出て、解説として付された三島由紀夫で「悪」のめざましい表示と紹介される「樊噲」になると、かなりスムースに読めました。
2021/02/19
tonpie
巻末の三島由紀夫による秋成へのオマージュがあまりに重い。で、以下感想としては変則的になります。私にとって三島由紀夫とは「中世における一殺人常習者の遺せる」「仲間」「英霊の聲」という恐ろしい三編を書いた人なのですが、これらは「雨月」「春雨」への思春期の没入によって育てられたのだと、ハッキリと気付かされました。崇徳院の怨霊を呼び出し対話する西行。義のために自死して霊魂化する武士。若い三島が勤労動員先で、台湾人の十二、三歳の少年たちに雨月を語って聞かせたという回想も怖いなあ。石川淳に一言も触れないのは印象的。
2020/12/10
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