ケルト民話集 (ちくま文庫 ま 16-1)
ケルト民話集 (ちくま文庫 ま 16-1) / 感想・レビュー
あたびー
#日本怪奇幻想読者クラブ 訳者荒俣先生の解説によれば、フィオナ・マクラウドは代理人と称していたウィリアム・シャープその人の「魔術名」であったことが死後判明したというからなんともオカルティック。一度その魔術名を使えば自動筆記のようにスラスラとケルトの挽歌を紡ぎ出すとか。スコットランド人は発狂して死にたがっているのだそうな。確かにアイルランドの民話では悲劇にもちょっぴりコメディタッチがあった気がするが、スコットランドは陰鬱で重苦しく、救われない気持ちになる。しかしこれは讃歌なのだ、きっと。
2020/03/15
nagatori(ちゅり)。
ここ数日暑かったので、ここは一つスコットランドケルトの話でも読んで涼もうかなと思ったんです。が。忘れてた、このドギツイまでの暗さ、重さ、狂気。これはスコットランドならではのものなのか、それともフィオナ・マクラウドの創作部分がそもそもこんな風合いなのか。納涼を通り越して、寒い。最後の荒俣さんの淡々とした解説で少し温められて復活しました。ありがとう荒俣さん。
2020/05/05
redbaron
なんとも言えない昏さがたまらなく癖になるかも。読まれる方は心して読みましょう。灰色に染まる空に薄日が差すが、常に風は吹きすさび、海は荒れ…ヒトに厳しい自然の中で育つ民話は、かくも厳しいのかしらん。ケルトにもいろいろあるのね。違ったケルト民話も読んでみたい。
2016/04/11
おりすと
幻想的でかつ仄暗い、そんなゲール人達の民話が蒐められた一冊。自由な恋の叶わぬ姫と英雄の悲恋譚、海の恐ろしさに纏わる伝承、旅人を呪いの犠牲にする風習などの話がが印象的で、どれもが死や狂気の要素を孕んだ物語となっています。こんなにも暗澹とした民話集が、それでいて当時スコットランドの国民独立運動においてどの様な役割を果たしたのか、という荒俣宏氏の解説も興味深いです。オカルティズムが大きな力を持っていた十九世紀末のファンタジーにも思いを馳せながら。
2017/08/11
あ げ こ
悠久に煌めく魅惑を物語る言葉にさえ、憂いは宿る。無自覚のまま受け入れ、進み続ける命運の、残酷さを知るが故に。緩やかに迫り来る滅びへの、重い確信を抱くが故に。解き明かし難く、だからこそ根深い哀しみもまた、霧のように満ち、物語を覆う。殉ずる様、抗う様、避けられぬ無常さの中へと、飲み込まれて行く様。わかり得ぬまま巡る、生と死。暗がりに潜む魔、ただ悠然と息づく自然の美しさ。晴れることのない昏さの中、それでも、謎に包まれた営みを記す物語は、健気に輝きを放ち続ける。その強さ、滅びを思い沈んでなお、歩む強さが印象深い。
2015/07/17
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