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神聖喜劇 第2巻 (ちくま文庫 お 16-2)

神聖喜劇 第2巻 (ちくま文庫 お 16-2)

神聖喜劇 第2巻 (ちくま文庫 お 16-2)

作家
大西巨人
出版社
筑摩書房
発売日
1991-12-01
ISBN
9784480025821
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神聖喜劇 第2巻 (ちくま文庫 お 16-2) / 感想・レビュー

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猫丸

再読二巻目。一巻よりも端的におもしろくなってきた。新たに登場したのは村上少尉。第五高校でドイツ文学評論と詩を発表する白皙の少年であった彼はしかし中途で陸士へ進路変更、職業軍人となる。真の自由主義を知悉するはずの村上が「帝国によるマニラ解放」の新聞報知を徳とし、聖戦思想を静かに語る。東堂はそこに謎を感じるが、保田與重郎の「呪術的な魅惑力」をもつ巧妙なデマゴギーが、一見戦争礼賛詩に見える室生犀星の触知する民衆の心情へ届くこともあり得るかと考える。それは虚無主義的反戦主義者としての自分の立脚点を疑わしめるのだ。

2021/01/05

勝浩1958

第3部運命の章「「匹夫モ志ヲ奪フ可カラズ」」における神山上等兵と鉢田二等兵、橋本二等兵の『皇国』の語に関する一連の会話のやりとりや第4部伝承の章第4「対馬風流滑稽譚」における大前田軍曹と神山上等兵との応酬は、まるで掛け合い漫才のようで思わず笑ってしまった。それにしても、この大前田軍曹は一見野性味溢れる強面の鬼軍曹のようでありながら、なかなかに奥行きのあるこれからどのような珍事を巻き起こすのか、主人公東堂二等兵とともに期待を抱かせる人物造形になっている。

2013/04/13

小倉あずき

光文社版が図書館になかったので2巻からちくま文庫へ。 「絶対無責任とそれに対する絶対服従との一大組織」という表現に唸った。村崎のような一歩引いた態度で臨むのが古参兵として正解な気がする。東堂と年上の未亡人との交情がとても大人っぽくてムツカシクテ、こんな陰影を現代の若者は体験するのかと思うと甚だ心許ない。

2019/06/20

ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね

大前田と村上少尉の対話の間に250ページ分回想・黙考する東堂(と作者)には畏れ入る。しかし自分でも驚くほどサクサク読めてしまうのは、やっぱりこれが喜劇だからなのだろうか。

2018/12/07

山島 小吉

抽象化された他者の欲望による役割は、用意された社会内での相互行為に適するのか。東堂太郎は、軍隊により用意された、兵隊という役割のための規定(抽象化された他者の欲望)と現前の社会状況の抽象的な他者の欲望にズレを見る。現前の社会状況が大きく役割の想定するものとずれる以上、常に自己と同一的な役割のクライシスにぶつかる。彼は、規定の欲望を役割の相互行為上の他者とみなし、現前の社会状況と他者を否定していく。役割は現前の他者との相互行為を求めない、むしろ抽象化された他者に重ならぬ場合は否定する。だからこそ確固なのだ。

2013/07/26

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