神聖喜劇 第4巻 (ちくま文庫 お 16-4)
神聖喜劇 第4巻 (ちくま文庫 お 16-4) / 感想・レビュー
猫丸
招集されて教練生活も三ヶ月。軍隊は闇雲な精神論だけを押し付けてくる場所ではなかった。上官の行動も悉く関連法の領内に束縛されなくてはならない。そのすべてを暗記して合法闘争を仕掛ける東堂太郎に手を焼く上官たち。応酬は「〜スベシ」「〜タルベシ」と「〜スルコトヲ得」「〜スルヲ妨ゲズ」の語尾解釈論にも及ぶ。法規の背後にある思想を剔抉しつつ、不法な要求を退け当然の権利を要求するも、相手はのらりくらり戦法と不意打ち騙し打ちを駆使してのしかかる。純論理的に勝利が約束されているかに見える東堂であるが、実はそうでない。
2022/01/09
小倉あずき
解説において指摘される「マルクス主義者の東堂が戦時中の軍隊において活き活きしているのに対し戦後の社会主義者の多くが党内の権力闘争に汲々として本来の活気を失ってしまった」というジレンマは社会主義が資本主義の調整弁という役割を超えると資本主義同様に有害となってしまうことの証拠なのだろうか。 また、執行猶予の人間の行動制限の内容がそのまま軍隊での生活に該当するということは軍隊が犯罪者の製造機関であることの動かぬ証拠と言えるのだろう
感想・レビューをもっと見る