本屋通いのビタミン剤 (ちくま文庫 い 12-2)
本屋通いのビタミン剤 (ちくま文庫 い 12-2) / 感想・レビュー
ばりぼー
二十数年ぶりの再読。『本の雑誌』や『朝日ジャーナル』等に掲載されたエッセイに、書き下ろしを加えてまとめたもので、取次に携わる方だけあって、本の出版、製造、流通などの面白いエピソードがてんこ盛りです。頁の一部が内側に折れて開くとはみ出してしまうのは福紙と言って縁起の良いもの、本屋の個性が出る平台の黄金配列図、委託制による山のような返品整理の血だらけ腱鞘炎の話、三島由紀夫は在庫がカラになり川端康成は返品だらけという「人の死と本の売れ行き」などなど、裏話の数々に存分に楽しませていただきました。
2017/03/22
波多野七月
最初にこの本が刊行されたのが、1990年2月。もう20年以上前だというのに、本の流通の仕組みに大きな変化がないその事にむしろ驚く。本の流通にたずさわってきた著者だからこそ書ける、本や書店に関するエピソードがてんこもりのエッセイ。一度でも、書店やその周辺で働いた事のある人なら、さらに楽しめるだろう。帯にある、この言葉がいい。「本を愛するすべての人に」それだけで、何だか嬉しくなってしまった。本を取り巻く環境が、この先どんなふうに変わっても。本屋に通うのだけは、きっとやめられない。
2014/10/02
岡本匠
この作者は「返品のない月曜日」に次いで二冊目。本の取次で働いておられ、本に関するエッセイをあちこちに寄稿されている。本書は、「本の雑誌」などの文書をまとめたもの。 本文中、小泉今日子がエンデの「モモ」が好きと発言したことで、同書が爆発的に売れ出したというくだりがある。その理由で「小泉今日子が、普通の女の子だったからだ。彼女が結婚したら、やはり普通の奥さんになるだろう。」とあるが、この予想は当たらなかったようだ。
2016/05/04
【すとちゃん】
最低でも週に1回は本屋に通う自分にとって、このタイトルはなんとも魅力的である。今風に言うなら本は何物にも代えがたいサプリメント。人によって効用の違いはあっても、知識を得たり心を豊かにしてくれたり、その効果は絶大。あとがきも、またいい。「本を読んでいる人を眺めているのが好きである。なんとも平和な風景」「まだ読んでいない本を自室の棚に並べておくぜいたくが好きである」「本の好きな女性と話しているのが好きである(中略)内面から光るようなものを感じる」。そうそう〝福紙〟って知ってます?最近見かけないなぁ。
2009/09/24
ぽんぽこ
30年以上前の書籍事情を、取次の人がまとめたエッセイ本。というよりそんなに経ってるのに本の流通形態があまり変わっていないことに驚きですし、このころから既に万引きが横行していたことにも驚きです。登場は書籍業界が一番安定していた時期のようで、今のような悲壮感はまったく感じられません。良くも悪くもバブリーだったのかな、という印象。書籍事情も今では大きく変わったので(漫画やラノベの流行など)、比べて読むのも面白かったです。
2022/09/23
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