アール・デコの館: 旧朝香宮邸 (ちくま文庫 ふ 7-2)
アール・デコの館: 旧朝香宮邸 (ちくま文庫 ふ 7-2) / 感想・レビュー
夜間飛行
白金にある旧朝香宮邸。まず玄関の曇硝子に刻まれている孔雀の羽を広げた女人像に目がいく。壁、天井、柱…全てが冷ややかなアール・デコに覆われている。唐草文や波形を隠し味に、曲線と直線の交わる幾何学的で硬質なデザインが主調を成しながら、ラリックの硝子、ラパンの壁画などが心地よい開放感を作り出している。果実や星などを象ったシャンデリアが、部屋ごとに異なる世界を見せてくれる。説明ぬきでいきなりアール・デコの館に迷い込んだ気分だ。モノクロで紹介されているパリのアール・デコ博も含めて、文庫本とは思えない臨場感に浸った。
2019/07/14
かっぱ
【再読】先日、念願かなって訪れることができました。やっぱり、本物はすごかった。しかし、朝香宮妃殿下は、引っ越し後、間もなく病に伏して、貼り上がったばかりのスイス製の花柄の壁紙を見ながら急逝されたというのは意外な真実でした。
2015/08/05
ホークス
建築の知識は皆無だが面白く読めた。自分の理解では「曲線強調のアール・ヌーボー」「合理と直線のモダニズム」等の革新運動に対し、旧来の様式派(ギリシャ、ゴシック、バロック等)が打ち出した革新がアール・デコだった。その宣言の場が1925年のアール・デコ博(パリ)で、アメリカは大きな影響を受け日本では無視された。ところが偶然の巡り合わせで皇族朝香宮の新邸がアール・デコ様式となった。この本は朝香宮邸の写真多数と要を得た解説で当時の建築状況に触れられる。植物のアール・ヌーボーに対し、鉱物のアール・デコということらしい
2015/11/22
りー
藤森さんが建築探偵の活動を始めた1970年代、現「庭園美術館」であるこの建物はまだプリンスホテル所有の迎賓館だったそう。愛情をこめ、明治以来の建築様式の変遷と、建物の由来を解説されています。朝香宮は、洋行中に交通事故にあい、フランスで静養することになります。フランスでの生活が馴染んだ1925年、パリで開かれたアール・デコ博覧会へ夫妻で足を伸ばし、新しい建築様式に心奪われ、新居にそのまま取り入れることにしました。建築にあたっては、アンリ・ラパンがパリで引いた図面を、宮内省内匠寮が統括して仕上げたそうです。
2020/04/07
かっぱ
日本に数少ないアール・デコの館を写真と文章で紹介。写真が7割近くを占めています。アール・ヌーヴォーとアール・デコの違いがいまひとつ分かっていませんでしたが、藤森先生のおっしゃるように、植物と鉱物の違いと捉えると分かりやすい。とにかく美しい写真が満載です。旧朝香宮邸は東京都庭園美術館として一般公開されているようなので、機会があれば訪れてみたいです。
2013/11/15
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