東のエデン (ちくま文庫 す 2-5)
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東のエデン (ちくま文庫 す 2-5) / 感想・レビュー
優希
明治初期を舞台にした作品集になります。時代の空気と共に人々の息遣いが聞こえてくるようでした。杉浦さんというと江戸時代という印象が強いので、明治時代を描いているのが新鮮です。
2018/04/26
yumiha
『4時のオヤツ』の藤野千夜の解説が魅力的だったのが本書の「ぶどうのかおり」。まだ江戸を引き摺っていた明治5年の横浜が舞台。人力車を引くビンボー画学生が乗せたのは、洋装の少年。その少年の正体がわかった後に画学生のもいだブドウは、きっと若紫色で甘酸っぱく切ない味がしただろうと想像した。この画学生と同宿の学生たちが繰り広げる「忙中閑あり」の5編も、杉浦日向子らしい目の付け所が光る作品。
2024/04/19
こばまり
明治時代というと、全てが一変し何やら土埃の立つような無粋な印象を抱いていたのだが、確かに江戸の延長線上に存在したのだと感じ入った。繰り返し読むだろう。
2024/03/05
かっぱ
あっさり、さらっとし過ぎていて、うっかり、内容が頭の中に入らないまま読み進んでしまって、あれ、どこでこういう展開になったんだと、ページを繰って読み直すことしばし。画風も内容も一度だけだと、印象に残りにくかった。読んだ時期の精神状態にもよるのだろうか。まあそんな中でも「仙境」の仙人だけは強く印象に残った。小説家の小川洋子さんが死者と対話するように小説を書いていると語っていたが、杉浦さんも同じように死者(江戸人)と対話するように漫画を描いているのかも知れないと思えた。この透明感はきっとそうだ。
2017/01/19
ホークス
明治初期を舞台にした短編漫画集。解説で赤瀬川原平氏が言っている様に、作品の中に当時の空気が流れている。妙にドラマチックだったり抽象的だったりせず、ありふれた感覚を大事にしている。その上で身分制の名残りや、外国人との軋轢などのエピソードを盛り込む。廃仏毀釈みたいに、いつの時代も人間は不安に怯えて何かにもたれ掛かり、それを自分の問題とは考えない。無残でチャーミングな人間を優しく見守る視線に著者のしなやかな強さを感じる。
2019/06/22
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