魔法使いの弟子 (ちくま文庫 た 4-3)
魔法使いの弟子 (ちくま文庫 た 4-3) / 感想・レビュー
拓也 ◆mOrYeBoQbw
ファンタジー長篇。お城の困窮で錬金術を学びに魔法使いに弟子入りするラモン・アロンソ。そこで影を失った不死の掃除女と出会い、アロンソも影と引き換えに術を学ぶが・・・・。と正統派かつファンタジーの基礎を抑えた作品ですが、登場人物の近代的で俗っぽい会話のやりとり等々、ダンセイニ卿のユーモア感覚を反映し楽しく読める、20世紀のファンタジーやスぺオペのベースとなった一冊ですねー(・ω・)ノシ
2018/05/05
不在証明
お城の財政難のため、可及的速やかに大金を用意せねばならなくなった主人公、金を錬成する術を学ぶために魔法使いの許へ(動機が俗っぽい)。影は人間に無くてはならないもの―といった王道ファンタジー的展開が来たかと思えば、以降ずっと魔法使いに奪われた影を取り戻す戦いに終始するという、とっても地味な絵面が続き、主人公の弄した策の子供騙し程度の稚拙さに本気度を測りかねる。それでも読ませるのは流石。魔法使いだけが、追い求めるものの為には何が必要で何が不要か、生半可な人間ばかりの中で一人、冷徹なまなざしで先を見据えていた。
2017/03/16
白義
影の谷物語の続編的世界観で、黄金時代から奇跡や神秘が去りゆく最後の一瞬の、魔法と恋のメルヘンを具象化している。文字の読み書きこそ魔法という設定も去ることながら、オーソドックスな囚われのヒロインとそれを助ける青年の話なのに、魔法使いが単なる悪役に留まらないところがいい。彼は善悪を超越したこの地球側の神秘の代表であり、彼の元でこの時代最後の幻想物語が紡がれた後に、「月出ずる彼方の土地」に向かうのである。それは全てのこの世のファンタジストの目標であり、それが果たされた瞬間は詩のような美しさ
2013/02/06
topo
黄金色に輝き地平線にいつまでも残光を残す夕陽のように美しいラスト五頁に震える。お話全てが面白いがこのラストは格別。そっと本を閉じ黄金時代の余韻に浸る。 錬金術の代償に自らの影を差し出した青年と、師匠の魔法使いの物語。
2019/06/25
鳩羽
隠され秘された魔法の片鱗もすごいが、隠されたままのミランドラやアネモネといった若い娘たちのこころも恐ろしく魅力的な魔法のようだ。明暗のはっきりした描写にくらくらし、魔法使いが弟子を育てることを諦め決別していく最後は、何か貴重なものを失ったかのような気持ちになった。
2012/08/23
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