森鴎外全集〈4〉雁 阿部一族 (ちくま文庫)
森鴎外全集〈4〉雁 阿部一族 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ブルーツ・リー
夏目漱石がそうであったように、森鴎外の作品も、晩年に至ってどんどん読み易くなっていきます。それは、森鴎外自身の成熟であったか、あるいは大正時代ともなると、文体が現在の文体に近づいてくるから、こちらの感覚として、読み易くなる、というだけなのか。 恐らく、両方だと思います。実際に書いてているものとしても、森鴎外の主題は、徐々に一般にも広く知られているような人物を、主人公に据えるようになる。しかし、その芸術性は、いささかも損なわれない。円熟の域に達し、読み易さと芸術性が共存する小説が完成する過程が見えてきます。
2019/10/10
葵衣
初の森鴎外作品。「雁」は岡田がかなり魅力的な人物で、二人の、本当にささやかなやり取りなども楽しめた。でも予想外にあっさりとした終わり方で、少し物足りなく感じてしまった。森鴎外は、感情をあまり表に出さずに淡々と語っていく作品が多いな。最初は私には合わないかな、と思ったけれど、読んでいくうちにこの作風に少し慣れてきた気がする。特に「護持院原の敵討」と「二人の友」が面白かった。なかなか衝撃が大きかったのは「阿部一族」。殉死の風習に潜む、人々の歪んだ価値観を垣間見た感じだった。
2014/06/05
ひろゆき
『雁』『阿部一族』日本の代表小説。『二人の友』鴎外の人をみる目、交友の作法。名声ある鴎外に近づく者を書いた作品はどれもいい。『興津弥五右衛門の遺書』切腹好き鴎外。追体験。『護寺院原の敵討』今ではあまりに時代劇に取り上げられてしまった敵討ち。案外これが嚆矢?『余興』『鎚一下』軍に属しながら、周囲に冷ややかな視線、とともにストレス。ほか三篇。
2014/01/02
IKUNO
正直、全集3までは鴎外のエリート臭が鼻につく作品も多くありましたが、全集4では肩の力も抜けたようで、どれも傑作といっていいと思います。 人の心情が細やかに表現されており、どの文章を読んでも心に沁みていくようで、こういう作品を読むと「本当に小説を読んだな」と思わせられます。 今読んでも全く古い感じがしません。もちろん、出てくる物や価値観などは時代が表れ出ていますが、作品としては今出されても違和感なく受け入れられそうです。
2018/03/17
うろたんし
茨木のり子が絶賛する『阿部一族』は、彼女の評を知らない前に読んで以来二度目の読了。以前よりずっと話の筋を追えて楽しめた。けど、言葉遣いの妙に気づくは未だ到らず。『御持院原の敵討』は案外面白かった。他、歴史にない小説六篇はどれも素晴らしい。
2013/12/06
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