恋する伊勢物語 (ちくま文庫 た 26-1)
恋する伊勢物語 (ちくま文庫 た 26-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『伊勢物語』入門には最適の1冊。各章段の特徴と面白さをよく伝えている。もっとも、通時性を意識しするあまりに、現代に引きつけ過ぎている感もまた否めない。そうすれば、わかりやすく、親しみやすくはなるだろうが、その代償として王朝の「雅」が失われかねないからだ。また、過去の助動詞「き」と「けり」を思わず説明してしまうあたりに元高校教師だった著者のプロフィールが透けて見えて微笑ましい。高1の古典の授業で習ったことを思い出す。あるいは、歌人の洒脱なエッセイとしても楽しめる。古典に仮託することで自由に語れるのだろう。
2017/03/01
ちゃちゃ
万智さんの自在な想像力にナビゲートされ、歌詠み人の心情を推し量り、物語の行間を埋める楽しさを存分に味わわせてもらった。『伊勢物語』は、言わずと知れた歌物語としては最古の古典作品。和歌を中心に据えた125の章段からなる物語は、“恋の指南書”として読み継がれてきたと言う。本作の魅力は、万智さんの個人的な体験も踏まえ、瑞々しい感性で古典を身近なものとして論じた点にある。言葉は移り変わっても、人の心は変わらない。みそひと文字から溢れでる人の想い。歌人俵万智の面目躍如、古典初心者には最適の『伊勢物語』エッセイ。
2020/11/21
さつき
俵万智さんが語る伊勢物語。伊勢物語自体は学生時代には何度も読みましたが、近頃とんとご無沙汰していました。こんなエピソードあったっけ?という話しもあり新鮮でした。解説によると万智さんが『少年少女古典文学館』所収の伊勢物語の現代語訳を執筆した頃に書かれた作品らしいです。伊勢物語というと恋物語の印象が強かったですが、子が親を労わる気持ちや、男同士の気の置けない付き合いなど様々な人々の心の機微を捉えていてハッとさせられました。
2020/04/24
しゅてふぁん
再読。俵氏の解説は例え話が身近に感じられるので面白い上に和歌の解釈もとても分かり易い。現代の人が敢えて古語で詠んだ歌みたいに思えてくる。あぁ、原文が読みたくてうずうずする!俵氏のように‘噛みしめるように、繰り返し繰り返し(P216)’読んでいったら、私にもこれまでとは違う『伊勢物語』の世界が見えてくるかな~。
2018/07/20
井月 奎(いづき けい)
俵万智は硬直していた短歌と人々の関係を取り持った改革者です。短歌を変えたのではなく、和歌は恋の発露を大きく取り上げ、恋は人の心が震えるものであることを再確認させて、今の言葉を平安の心にのせたのです。飄々とした女性ですが行ったことはすごいのです。詩作も素晴らしく、『伊勢物語』の和歌を現代語訳にする際にみそひと文字でやるという離れ業をみせていまして、その味わいや格別です。本書で俵万智は創作においてのレトリックへの思いや、古典文学の味わい方、読み解き方をさらりと教えてくれています。すごいです、この丸顔の女性。
2016/11/12
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