森鴎外全集〈10〉即興詩人 (ちくま文庫)
森鴎外全集〈10〉即興詩人 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
奥澤啓
森鷗外の代表作を三作あげよと、訊かれたら、『澀江抽齋』、『即興詩人』、『獨逸日記』と、とりあえず答える。明治以降の翻訳文学の代表作を三作あげよと訊かれたら『即興詩人』、『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』(渡辺一夫訳)、『ガリバー旅行記』(中野好夫訳)と、とりあえず答える。『即興詩人』。鷗外が九年の歳月をかけて心血を注いだ文語文の大文章である。文語文の偉大な達成である。日本人に生まれたら、死ぬまでのあいだにこの文章を読まなければ、日本人に生まれた意味がない。そこまで言うか。言うのである。
2015/04/06
春ドーナツ
初版例言によると翻訳は明治25年9月10日に始めて、九星霜、脱稿は34年1月15日だそうです。「明治村」のゆかりある邸宅で読むことができたら風情があるだろうなと思う。縁側に座し、目の端には鮮やかなあじさいの花。風の通り道があってひやりとする。アンデルセンの教養小説というよりも森鴎外の作品として紐解いてしまう。日本人に馴染みのないものには丸括弧で注釈が付されている。例:「アルタナ」(物見のやうにしたる屋根) 傍注が充実。むしろ、時の隔たりを感じる。けれども明治は思うほど古くはない。たまには雅文体いとをかし。
2019/06/09
春ドーナツ
4年ぶりに再読す。前回は森さんの本を集中して読んでいたので、雅文体/文語体に慣れてはいないが、親しみを感じていたと記憶するので、今回のように大苦戦しなかったように思ふ。もしかしたら「諸国物語」の文章の肌触りが念頭にあって、こちこちの文語文に面食らったのかも知れぬ。翻訳本を中心に読んでいる。すると、ある時間が過ぎゆくにつれ、鴎外の訳文に帰りたく候、みたいなことを過日、例の犬の如く何かに刷り込まれたのだろう。帰郷のおもひで(ぽろぽろ)古書店より買い求めし、紐解き始めた。1日百頁でへたばり候。じっくりと相対す。
2024/10/29
coromo
再読 超美文。文語文は頭使う
2014/02/02
K.
読み終わるのに2年以上かかった。高2の秋、志望大学の二次試験に出題される近代文語文対策のために読み始めるもクセが強くてなかなか読み進めることができず放置。高3の冬にもチラチラ読むが半分も読めなかった。しかし読めないながらもその文体の美しさには魅了され心酔していた。既に大学生になった今となっては、いつの間にかこの文体に慣れていた。僕はベルナルドオの溌剌たる姿が好きだなー。僕の高校時代の思い出の一冊。
2015/01/15
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