新聞王ジラルダン (ちくま文庫 か 27-1)
新聞王ジラルダン (ちくま文庫 か 27-1) / 感想・レビュー
ころこ
みなし児であり20歳で破産し、軍隊も経験したジラルダンは、記者ではなく経営者として名を成します。まず新聞の購読料を廉価に設定し予約購読者数を伸ばし、その販売部数を売りに高値で広告をとる。広告の利益は更なる新聞の購読料の下げに使うことで、予約購読者数が更に増える。それは広告の値段を上げることになり、その利益を…としていくと、新聞の値段は限りなくタダになります。著者が注目するのは、記事の質ではなくメディアと商業の関係です。広告は新聞を成り立たせるための夾雑物ではなく、欲望のメッセージを主体にした新聞をつくるこ
2021/10/23
ゲオルギオ・ハーン
19世紀のフランスにて新聞を商業化させることに成功した人物エミール・ド・ジラルダンを紹介した一冊。当時の新聞は政治的主張がメインで、その主張が受け入れられれば売れるという単純なもの。著作権についての規制もひどく曖昧なため無断転載が横行していた。ジラルダンも親友のメズレーと新聞事業を始めた頃は同じだったが、編集技術というか売れる記事を見抜く力があり、レイアウトセンスもあった他、知名度の重要さも分かっていた。また、人々の知りたい情報はなにかを探る嗅覚も優れており、モード新聞を出してこれも成功する。
2022/06/30
ふろんた2.0
広告収入を得ることで新聞を大衆紙へと変貌させたジラルダン。私生児から成り上がり、生涯ジャーナリズムの変革のために戦い続けた。
2015/01/06
春ドーナツ
書影を見て「人面蓑虫」を思い浮かべた(乱歩の芋虫と共に)。花屋さんで仏花を買うと新聞紙で包んでくれますよね。読み終えた後、これは擬人化された花束だったのだと合点した。大統領選挙でナポレオン三世を応援するジラルダンの風刺画で同じパターンが見られる。新聞王の業績、思想は高度資本主義社会を凌駕しているように思われ、驚くことしきり。サン=シモン主義の影響が伺われるとはいえ、ジラルダンの夢であった政治参画が叶っていたら「世界」は今よりもずっと住み良い場所になっていただろう。柄谷行人の理想と共鳴するものがあると思う。
2018/12/06
とうゆ
以前は新聞とは政治的な主張を載せる媒体に過ぎなかった。なので読者のことは考えておられず値段も高かった。そのため、多くの人は新聞を買えず、壁面に張り出されたものを読むしかなかった。しかし、ジラルダンは新聞を商品と考えた。広告収入を主な利益にすることで値段を従来の半値にし、読者の需要に沿って紙面を埋めたのである。とても柔軟な思考を持った人だったようで、広告収入ベースでの運営、新聞小説、ポスター、ファッション業界の流行を新聞でリードする、これら全てがジラルダンが開発したものである。まさに時代の風雲児だったのだ。
2014/05/23
感想・レビューをもっと見る