男流文学論 (ちくま文庫 う 17-1)
男流文学論 (ちくま文庫 う 17-1) / 感想・レビュー
かふ
小倉千加子が「かしまし娘」に例えていたが今の人は「かしまし娘」も知らないだろうな。大阪三姉妹の漫才のような鼎談は、世代間の違いもあって面白い。質の高い読書会。それぞれの解釈の違い。富岡多恵子は戦後の動乱期を知る文学者でそうした作家にはドライになれないところがあるが、学者である二人はその辺ドライだった。それでも上野千鶴子は母性(父性)というドライになりきれない部分があるような。小倉千加子が一番ドライな現代っ子という感じか。各作家の読みは面白いがその作家のファンの人は読まない方がいいと思う。特に春樹ファンは。
2023/05/18
原玉幸子
性格なのでしょうが、最後は収斂して纏まるのに途中では矢鱈と「いや、…違います」との否定表現の応酬なので、対談本にしては珍しくちょっと読みにくいです。吉行淳之介は上野が『女ぎらい』で思いっ切り腐していたので、先制攻撃から展開が想像出来、又、上野の世相としての小説に対する社会学者として切り口と表現は秀逸なので、男女家族観や性愛に関わる精神文化の一部を小説が担ってきたことが納得出来ます(でも、性愛を「そうやって、やったりする訳でしょ」との言いっぷりで言うのは、ちと下品かな)。大変面白い。(◎2022年・秋)
2022/10/07
しゅん
直感的な発言を重視して文字に残す。三人がこだわるポイントとして共通しているのは「リアリティ」だろう。その「リアリティ」は、「こんな女はいない」「セックスが描けていない」という言葉で表される。素朴と言えば素朴だが、素朴さこそが見捨てられていたとも言える。上野千鶴子は構造的、あるいは図式的な読解を示し、富岡多恵子はそこに同意せず、テクストから読み取った感情から語り出す。小倉千加子は、もっと渇いた感想を残す。三人が、実はかなり異なる立場にいる印象。編集者からの質問が一番鋭いと思ったら藤本由香里だったか。
2022/03/26
ほんままこと
痛快で面白かった。これまでの日本文学が男性の価値判断によって優秀と認定されているだけで、果たして真に優れているのか?という鼎談集。男性文学者たちが紫煙を燻らせてお互い賞め合っている光景を打破している印象だ。島尾敏雄『死の棘』に関して上野千鶴子は「女性の内側には男をとことん内面支配したいという欲求がある」と述べ、その内面支配が傷付けられて破壊された時に妻ミホが狂気に陥り、夫はそれを挑発さえしながら小説に書いた、とあるのは鋭い。しかし現代、この先は男女以外の性別の世界が展開するのだろう。
2022/11/13
ヒロミ
大学生の頃読了。フェミニストの論客たちが様々な文豪たちの作品を一刀両断。一見草食系な村上春樹を取り上げているのが興味深かった。いるんだよなあ。こういう一見やさしげだけど女性を下に見ている奴って。やれやれ。とにかくおもしろかったです。フェミニズムに興味がある方にはまんべんなくお薦め。
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