遠い朝の本たち (ちくま文庫 す 14-1)
遠い朝の本たち (ちくま文庫 す 14-1) / 感想・レビュー
ケイ
『クレールという女』を目的で読まなければ、私は名前すら知らないままだっかもしれない作家。読んで納得したのは、彼女と私の文学への興味はほとんど交錯する所がないから。だから、彼女自身が生み出す言葉は私を強く惹きよせるのに、彼女が興味のあることを書くと、私の頭の理解のできない所を滑っていった。例外は『星と地球の間で』(サン・テグジュペリとその著作について)、これは何度も読み返していく。『父の鴎外』列挙された作品を読んでから感想を改めて。『しげちゃんの昇天』しげちゃんの思いやりの深さ心を打つ。
2018/08/16
新地学@児童書病発動中
須賀さんの本についての素晴らしいエッセイ集。一冊の本がひとりの人間の人生に及ぼす影響の大きさを、息の長い、静謐で美しい文章で描き出している。禁断の楽しみだった読書が、自分の内面を変えて、自分の人生を支えてくれることに気づく「星と地球のあいだで」や、孤独な俳人の姿を浮き彫りにする「ひらひらと七月の蝶」は特に心を揺さぶられて、短いエッセイなのに長編小説を読み終わった満足感を得ることができた。
2014/11/08
アン
少女から大人へと成長する時期に魅了された本について、家族や友人とのエピソードと共に綴られた作品。須賀さんが影響された本の中でも特に印象的だったのはリンドバーグ夫人のエッセイです。書くことの衝動を覚え心奪われた様子と「さようなら」という言葉の意味をひたむきに考え続けた姿には心打たれるものがあります。戦争のあった時代に家族の深い愛情に包まれ、真摯に自分の生き方と向き合い、しげちゃんと尊い友情を育まれた思い出には心がじんわりと。「今のままのあなたで!」凛として前を向く美しさと人を想う優しさは柔らかな光のよう。
2020/09/16
kaoru
須賀さんが病床で推敲を続けた随筆集。成長とともに親しみ彼女をかたちづくった本が肉親や友人の懐かしい思い出とともに語られる。冒頭の「しげちゃんの昇天」は友人を愛しんだ須賀さんらしい一篇。アン・リンドバーク、サンテクジュペリの『人間の土地』、ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』、抵抗運動を描き日本ではあまり知られていないクロード・モルガンの『人間のしるし』を通じて女性の生き方を模索した青春時代。父に勧められた『澁江抽斎』に鴎外の「西洋の技法、日本古来のレトリックと漢文の比類ない統合」を見て取る。「人生がこれほど→
2022/12/22
はたっぴ
須賀さんの幼少記と出逢った本の感想が満載で、面白く読んでいるうちに離れ難くなってしまった。やはり子供の頃の読書は大切だ。著者を文学へと導いてくれたのは、父親や叔父、祖母達からの贈物の本だった。読書の達人である父親は全集や武鑑(江戸時代の年鑑紳士録)にまで手を広げて読み漁っていたらしい。著者は達人の娘らしく、子供向けのたぶらかしには乗らない。大人の陰謀を感じる作品には厳しく、キリッとした主張があるのだ。数少ないが本物の友情を育み、孤独を愛する少年のようなピュアな心を持つ人だったと思う。至福の読書となった。
2016/04/08
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