偽史冒険世界: カルト本の百年 (ちくま文庫 な 29-1)
偽史冒険世界: カルト本の百年 (ちくま文庫 な 29-1) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
再読。今回は、なぜニセモノの歴史に、人は簡単に惹かれてしまうのか、という点が印象に残った。学問的には明確に否定されるべき偽史とはいえ、そこに惹かれてしまう心情は、決して理解できないわけではない。むしろ気持ち「だけ」はよくわかる。とはいえ「あとがき」にもあるように、現実との混同、理想を無理に実現させることは、厳につつしむべき。ロマンとはそういうものだろう。
2016/12/22
へくとぱすかる
本当の自分を探す、というとき、「本当の自分」が、現にここにいる自分からの堅実な出発ではなく、理想化された自分への強い願望であるとき、人はカルトにひかれやすい。架空の歴史の創造に、著者は自分探しの影を指摘している。一歩間違えばロマンを通り越して社会・世界全体を混乱に巻き込むことのある偽の歴史。客観的には信じがたいはずなのに、ロマンの衣に包まれることで、人は容易に信じてしまうものらしい。ニセの歴史への情熱を著者は評価しつつも、現代のカルトにひかれていく人々に警鐘をならしている。
2014/08/02
くさてる
「義経=ジンギスカン説」「日ユ同祖説」「竹内文書」といったいわゆるトンデモな陰謀論の数々を紹介、解説したもの。正直言って、よくもまあこんな内容を大真面目に通用するものとして発表したものだと思いたくなるものばかりだけど「どこをどうやると、そういう結論にいたるのかは謎だが、いたってしまったのだから仕方がない」のです。ただ面白おかしく突っ込んでいるだけでなく、そんな陰謀論や謎説になぜ人間が傾倒していくのか、「現実」と「理想」のあいだで道を見失った人々の心も考察した「あとがき」までで完成される、良書です。
2022/06/06
_apojun_
図書館本。トンデモ本の世界でおなじみの「義経=ジンギスカン説」とか「日ユ同祖論」とか「竹内文書」といった奇説について、当時の歴史的な背景や関係者の人物像なんかをほんとうに深く深く掘り下げた本。 トンデモ本の世界を読むだけではわからなかった、かゆいところに手が届くような本でした。なるほどと思わせるところも多くて、素直にためになりました。 著者のあとがきがなかなか印象的できっちりと読後をしめてくれました。
2021/02/13
Mentyu
戦前における偽史・陰謀論・新興宗教の隆盛を分析しつつ、同時に冒険小説の流行に着目することで、当時の日本が求めた「こうあって欲しい」という物語の輪郭を浮き彫りにする内容。言われてみれば、空想の世界を冒険するのも、存在しない歴史をぶち上げるのも、そこには求められる物語への需要と供給があるのだなと気づかされる。親しみやすい文体であるが参考文献もしっかり載っており良心的。
2019/11/15
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