私説東京繁昌記 (ちくま文庫 こ 4-18)
私説東京繁昌記 (ちくま文庫 こ 4-18) / 感想・レビュー
ワッピー
写真家荒木経惟氏とのコラボで巡る1980年代の東京。タイトルは逆説で、63年の東京オリンピックによって町が殺されていく様子を悼み、自分の記憶と重ね合わせた透かし絵紀行。ともに東京下町に生まれ育った二人の視点でみる80年代は、ワッピーにもつながっていた時代として、懐かしさを感じます。今回のオリンピックを契機にまた都市開発はさらに進行して、ここに書いてあることももはや理解不能な時代になるのだろうか。変化は不可避とはいえ、町の記憶をとどめるランドマークが次第に薄れていくのは寂しいもの。気分はすっかりノスタル爺。
2019/07/27
とみやん📖
1983年からの雑誌連載をまとめたもの。都内各地の思い出や街の歴史を振りかえる。アラーキーの写真がふんだんに掲載されている。四十年前の都内の写真は貴重だし、そこに映る街と人の雰囲気が良い。国木田独歩の武蔵野の舞台が原宿と知りびっくり。代々木の森こそが原風景だったのか。青山は兵隊の街。原宿は米軍由来のアメリカンカルチャーの街。神保町は都電の乗換場所。浅草の本当の繁栄は戦前まで。大川に堤が出来て廃れた柳橋。興味が尽きない。所々紹介される文献も有り難い。町ごろし、東京破壊など、開発にはにべもない。
2020/08/23
猫丸
吉本隆明による解説つき。といっても本書のために書かれたのではなく「マリ・クレール」での書評を転載したもの。したがって小林本人に直接言いにくいところを突いている。要約すれば「あんたのマザコンも重度だね」。東京生まれに限ったことではないが、生まれた環境のインフラが世代平均を上回る 場合、要求水準の高い甘えん坊に育つのだろうか。例えば電車が動かない場合に鉄道会社に文句を言うなど。まったく理解できない心理である。日本橋生まれが大切な心の拠り所になってしまった小林にも、この種の横暴な心性がほの見える。
2019/10/07
tom
荒木経惟の写真が見たくて入手。東京で生まれ育った小林信彦が蘊蓄を語りながら東京巡り。これに付き合って、荒木が写真を撮る。東京の街のディテールなんてもの、部外者の私には何の感興も催さない。でも、荒木の写真は良いです。素人とプロ、どこが違うのか言葉では表現できないけれど、間違いなく違うのです。どこが違うのだろう。不思議でならない。
2019/05/20
へたれのけい
「懐かしの江戸・東京街歩き」的な本を予想していたのですが、あらあら、そんな甘い物ではありませんでした。読み切るには体力が必要な本です。
2015/04/23
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