ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書 20)
ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書 20) / 感想・レビュー
夜間飛行
語りうる事柄より語り得ない事柄に着目した言語論に目を瞠った。我々は(現実と共有される)論理形式によって言語を用いるが、その論理形式を論理の外から語るための言語を持たない。語り得ぬものを限界づける境界こそ自我であると言うウィトゲンシュタインは、もう一つの語り得ぬもの=(善悪や宗教など)超越的なものにも目を向ける。両者を結びつけている〈私〉が世界の実質だ…とは何と斬新な考え方だろうか。彼の思考はさらに中期の文法、後期の言語ゲームへと進み、言語という基準において何かを志向する者としての人間が浮かび上がってくる。
2017/06/06
Aster
入門書としては本当に素晴らしい出来だと思う。少し難しいけれど。論考よりも探究の方がラディカルな気がする。 個人的な話、最近「はじめてのウィトゲンシュタイン」を買ったので「まぁこっちもどうせ読むから軽く読むか〜」という感じで読みました。それでも十分ウィトゲンシュタインの言いたいことのエッセンスは伝わりました。
2021/02/12
ころこ
言葉と世界の関係を、前期は素朴実在論として、つまり世界→言葉として、後期は世界と言葉が同時に立ち上がる言語ゲームとして一般的には理解されている。しかし本書の優れた洞察は、前期にも後期と同じことが背景にあり、ウィトゲンシュタインは一貫して問題に取り組んでいたとしているところにある。著者はそれを「語り得ぬもの」と呼ぶ。これは「語り得ぬものについては、沈黙しなければならない」という『論考』にある有名な言葉からの引用だ。この「語り得ぬもの」には先験的と超越論的という2つの意味が重なっている。先験的は前期では写像理
2024/01/08
まさむ♪ね
わたしの理解は遠くおよばない。けれどもわたしは感じることができる。わたしの心を激しく揺さぶる世にも美しい哲学書、『論理哲学論考』。その著者ウィトゲンシュタインの思考に少しでも近づきたくて。しかしというか、やっぱりというべきか、この入門書でさえわたしの理解は追いつかない。ただ、永井氏のなかにはゆるぎない、彼だけにしか見ることできないウィトゲンシュタインが存在するようだ。とにかくそれが羨ましくて。
2016/04/04
ころこ
2つの語りえぬものとは①言語を使用するときの当の言語に関するメタ規則が無いこと(先験的)②言語によって限界づけられた世界(超越論的)。限界づけられた世界に実質を与えることにより主体が生まれるのは東洋哲学のようです。②はカントの時間と空間のアンチノミーですが、①を内的関係と理解すると分かりやすい。前期の写像関係(論理)、中期の文法(語の位置が語の意味を構成する)、後期の言語ゲーム(語に意味を与えるのはその使用による)は、それぞれ内的関係の隠喩になっています。原理的に要素に切り離せないため語りえないのです。
2019/12/04
感想・レビューをもっと見る