9条の戦後史 (ちくま新書)
9条の戦後史 (ちくま新書) / 感想・レビュー
佐島楓
コロナ禍のなか、変質してしまった世界を踏まえた論考を加藤氏の筆で読んでみたかった。理想も理念もなくてはならないものだが、目の前にある現実をどう乗り越えていくか。第二次世界大戦の地獄を体験した最後の一人が地球上から亡くなるとき、またそれ以降、ひとりひとりがどういう実感を持てば戦争は回避できるようになるのだろう。
2021/06/22
壱萬参仟縁
日本社会の安定のカギとして機能していた(225頁)。高坂正尭、永井陽之助、猪木正道は保守現実主義的解釈合憲の『中央公論』。これに対し、革新中立主義的護憲論の丸山真男、坂本義和の『世界』。60年代以降の構図(227頁)。米国にとって最も好ましいのは、政治・軍事・経済で日米が米国優位の従属関係が保たれていること(241頁)。252頁~森嶋通夫先生。自分流に考える破天荒な人物(254頁)。他、都留重人(311頁~)。良心的兵役拒否は、誰もが服すべき規範に全身的拒否で対する行為(330頁)。
2021/11/27
ころこ
批評の本ではなくて、政治の本になっています。色々調べています。しかしそれを一気通貫で書くことは、以前の著者の仕事を裏切ることになるのではないか。日米の「ねじれ」を国連に託すことで解消するとは、著者が批判する典型的な護憲派が9条に無謬性を託した対象が変わっただけではないかという疑問が残ります。自衛官の身体性に想像が及んでいない、つまり、左派からは指揮系統の曖昧な軍隊ほど危険なものはない、右派からは動機の曖昧な組織に命は懸けられないという容易に思い当たる反論に耐えうる結論にはなっていないと思います。
2021/05/10
Kai Kajitani
護憲/改憲という戦後政治の対立軸は、当初は対米自立を訴える改憲派と、平和主義の理念と経済的繁栄がぼんやりと共存していた護憲派、という構図だった。それが、冷戦の崩壊とそれを受けたジョセフ・ナイによる日米安保の「見直し」により、対米自立どころか米国の安全保障政策にどこまでもついていくことを主張する改憲派と、それに対して実利という手ごまを失い、安全保障の代案もなく、旧来からの平和主義しか対抗軸を持たない護憲派、という構図に変化した、という指摘は目から鱗だった。安保法制をめぐる議論を総括する意味でも有意義な本。
2022/08/15
takao
ふむ
2024/06/17
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