犯罪症候群 (ちくま学芸文庫 へ 2-1)
犯罪症候群 (ちくま学芸文庫 へ 2-1) / 感想・レビュー
浅香山三郎
3章からなるが、「犯罪 そのデザイン」は、別役風の逆説的な犯罪の定義であり、さういふ思考を不条理劇の作家として、読者に披露し愉しませる感がある。それが、次の「犯罪 そのイロニー」では、社会学的になり、「犯罪 そのたましい」では、より人間のありやうの深みに入り込んで、その鋭さにはつとする。ちくま文庫的なエンターテインメントから、ちくま学芸文庫的な學藝の域に一冊の中で深みが増して行くやうな印象をもつた。
2022/03/06
傘緑
「《殺人》は…いまだにそれが犯罪であることを疑われていない…もっとも犯罪らしい犯罪なのであり、それが犯罪的であることに比較したら、他のあらゆる犯罪はほとんど犯罪ではないのでないかと思われる」 劇作家・別役実の書く犯罪論。「アリバイ」「非常線」「指紋」などの犯罪に関する個々の事象の彼らしい抱腹絶倒の分析。つづく「金属バット殺人事件」「エヴノ・アゼフ」「ネチャーエフ」「連合赤軍」などの個々の事件・犯人の分析は人間が凶行へと陥る、その深淵を冷徹に抉り出している。個人的には川瀬申重の陥った魂の蟻地獄に戦慄した。
2016/09/06
PYRRHUS
バラバラ殺人を風呂での小便に喩えるあたりは多分「別役実っぽい」と言えるんだろうなぁ。「笑える」面白さを期待して手にとってみたけれど、残念ながらそういうタイプの本ではなかった。
2011/12/12
毛竹齋染垂
「法学部生須らく本書を読むべし」 此の本の肝は、解説の長尾教授も認めるように、「わかりません」一派を巡る一連の論考であろう。犯罪が意外とわが身にとって親和的である事を蜿蜒と示された読者はこの章でふと立ち止まる。そして自らを既成の事物による解釈に委ねる是非を突きつけられる。「はい」と言えばその人の前には安逸が待っているであろう。「いいえ」と言えば、その人はより苦しく、より人間的な道程を歩むであろう。ではこの問いに「わかりません」と答えたら・・・? それは今の筆者には残念乍ら分からないことである。
2012/03/16
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