宮沢賢治の彼方へ (ちくま学芸文庫 ア 3-1)
宮沢賢治の彼方へ (ちくま学芸文庫 ア 3-1) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
校本全集編集者・天沢さんの初期の賢治論。比喩に満ちていて、ちょっと難解。賢治の詩がモノローグ、対して童話は語りかけだという指摘には、思わず膝を打ちたくなる。多数の詩を残した賢治だが、『春と修羅』の途中でさえ、<詩>は失速していったのだという。以後の作品が「余生」だとは! 妹にかかわる作品を除いて、詩はなんだかなぁ、と、昔感じた直感も、そんなに見当外れではなかったかもしれない。
2016/05/07
ハチアカデミー
宮沢賢治を読むことの愉悦が詰まった一冊。ゴールを見据えずに〈書くこと〉を続けた賢治が描いたものと、描こうとしたものを探る。言葉そのものをみつめることで広がる読みの可能性を示し、さらにいくつかの作品をより合わせ大きな解釈をするその筆致に圧倒される。「よだかの星」と「銀河鉄道の夜」をつなぐ節、「よだかはなぜみにくいか」で作品に表れる「自己犠牲」の問題を留保し「ホモイの劫罰」の節でその彼方へ読みを開く。自らの作品を「まよいの跡」と言った賢治のその軌跡を再度歩きなおすかのような一冊である。
2014/10/09
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